ACL損傷患者ジャンプ着地時の膝関節角度の解析

ジャンプ着地時には衝撃を吸収するために下肢の関節の協調的な働きが必要である. ACL損傷患者の膝関節機能障害は筋力だけではなく, 協調性の障害が起こることが考えられる. 今回, 我々はACL再建術を行った患者のジャンプ着地時の動作解析を行うことにより若干の知見を得たので報告する. 対象は, 自家膝蓋腱を用いたACL再建術後患者で術後1年以上経過した4例, 男性2名, 女性2名であり, 平均年齢22.8±3.3歳で術後平均期間は22.5±17.1ヶ月であった. 方法は20cmの台上より1側脚で飛び降り着地する動作を行わせ, PEAK社製MORTS5を用い2次元動作解析にて膝関節の角度, 角速度を...

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Published in理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 206
Main Authors 荒木茂, 加藤謙一, 灰田信英, 神谷正弘, 宮本隆志, 平木清喜, 谷口尚美, 古矢泰子, 橋場貴史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2000
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ISSN0289-3770

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Summary:ジャンプ着地時には衝撃を吸収するために下肢の関節の協調的な働きが必要である. ACL損傷患者の膝関節機能障害は筋力だけではなく, 協調性の障害が起こることが考えられる. 今回, 我々はACL再建術を行った患者のジャンプ着地時の動作解析を行うことにより若干の知見を得たので報告する. 対象は, 自家膝蓋腱を用いたACL再建術後患者で術後1年以上経過した4例, 男性2名, 女性2名であり, 平均年齢22.8±3.3歳で術後平均期間は22.5±17.1ヶ月であった. 方法は20cmの台上より1側脚で飛び降り着地する動作を行わせ, PEAK社製MORTS5を用い2次元動作解析にて膝関節の角度, 角速度を測定した. 測定は数回の練習の後行い, 同側について2回測定した. また, 川崎重工社製等速度運動訓練器MYORET Rz-450を用い膝関節伸筋群, 屈筋群の60deg/sのピークトルクを測定した. 統計処理はt検定を用い, 有意水準は0.05とした. ジャンプ後の着地動作を, つま先接地から踵接地までを着地前期, 踵接地期以降を着地後期とした. つま先接地時点の膝角度(ATC), 踵接地時点の膝関節角度(AHC), 最大膝屈曲角度(MKF), 最大角速度(MAV)の平均値を健側と患側で比較した. 膝関節伸筋群, 屈筋群のピークトルク値の健側と患側の比は, 等速度運動60deg/secで伸筋群で平均80.7±3.7%, 屈筋群は平均94.9±8.0%であった. 山本らはスポーツ復帰の目安として膝関節伸筋の筋力健側比を80%以上としている. 今回の対象者では, 伸筋群の筋力が最も低い者で77%であり, 若干の低下があるが, 屈筋群は全例90%を越えていた. ACL損傷患者では着地時に膝折れ様の現象が起こると仮説を立て実験を行ったが, 実際には膝関節の角度には有意差が認められなかった. また, 着地前期から着地後期に起こる膝関節の最大屈曲角についても有意差を認めなかった. しかし, その間の最大角速度には有意差が認められ, しかも患側の方が健側に比べ遅い結果が見られた. このことは健側に比べて患側膝関節が, 着地後, 柔軟に屈曲しないことが予想される. 着地前期から後期にかけて起こる, 膝関節の屈曲スピードの遅延が膝関節の衝撃吸収機能に影響するものと思われる.
ISSN:0289-3770