変形性膝関節症の術前後における時間距離因子について

全人工膝関節置換術前後の時間距離因子から, 変形性膝関節症(以下, 膝OAと略す)患者の歩行速度の増加様式の特徴を検討したので報告する. 「対象」 膝OA患者23名, 全例女性で年齢は72.7±6.0歳であった. また健常者16名, 年齢は64.7±4.5歳を比較対照群とした. 「方法」 自由・最大努力歩行を術前後に行い, 歩行速度(以下, GVと略す), ストライド長(以下, SLと略す), ケイデンス(以下, CAと略す)を測定した. 膝OAの自由歩行をOA Comfortable(以下, OCと略す), 膝OAの最大努力歩行をOA Fast(以下, OFと略す), 健常者の自由歩行をNo...

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Published in理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 126
Main Authors 酒井孝文, 高橋昭彦, 村上仁之, 南野靖夫, 津村暢宏, 妹尾泰弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2000
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ISSN0289-3770

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Summary:全人工膝関節置換術前後の時間距離因子から, 変形性膝関節症(以下, 膝OAと略す)患者の歩行速度の増加様式の特徴を検討したので報告する. 「対象」 膝OA患者23名, 全例女性で年齢は72.7±6.0歳であった. また健常者16名, 年齢は64.7±4.5歳を比較対照群とした. 「方法」 自由・最大努力歩行を術前後に行い, 歩行速度(以下, GVと略す), ストライド長(以下, SLと略す), ケイデンス(以下, CAと略す)を測定した. 膝OAの自由歩行をOA Comfortable(以下, OCと略す), 膝OAの最大努力歩行をOA Fast(以下, OFと略す), 健常者の自由歩行をNormal Comfortable(以下, NCと略す), 健常者の最大努力歩行をNormal Fast(以下, NFと略す)とした. SLは身長で除した値を用いた. 以上の値を用いて, 自由歩行に対する最大努力歩行の変化率を可変域として算出した. 「結果」 GVは術前OC40.8±12.1m/min, OF57.7±17.5m/min, 術後OC46.4±11.4m/min, OF60.8±13.6m/min, NC58.4±13.0m/min, NF76.0±11.2m/minであった. SLは術前OC50.9±10.7%, OF53.9±11.4%, 術後OC56.4±11.5%, OF59.0±12.3%, NC62.9±10.0%, NF72.6±12.3%であった. CAは術前OC102.4±15.1steps/min, OF137.0±22.3steps/min, 術後OC111.6±16.8steps/min, OF140.6±21.4steps/min, NC119.7±15.5steps/min, NF145.1±20.9steps/minあった. 自由歩行に対する最大努力歩行の変化率である可変化率は, 術前がGV42.5%, SL7.0%, CA34.6%, 術後はGV32.7%, SL6.4%, CA28.1%であった. 健常群GV35.7%, SL17.6%, CA22.2%であった. 「考察」 速度の増加様式は, 健常者でストライド長, ケイデンスが同機に増大しているのに対し, 術前の膝OAではケイデンスの大幅な増加と対照的にストライド長の増大は僅かであり, 当疾患の歩行の特徴と考えられた. また術後においてもこれらの特徴が残存しており, 要因として術前の長期に及ぶ罹患期間により, 習慣化された歩行パターンが残存していると考えられた. このことから術後の理学療法においては, ストライド長の増大を伴う速度の増加様式を再学習しうるプログラムとして構築させる必要があり, また膝僚OAの歩行能力を評価する際, 歩行速度のみでなくその構成要素であるストライド長, ケイデンスにも着目することが重要である.
ISSN:0289-3770