理学療法士に求められる身だしなみについて

身だしなみは, 人の印象を決定する重要な要素であり, 対人関係を円滑に保つために必要最低限のマナーと考えられる. 今回, 理学療法士(以下PT)の身だしなみについて, 当院の患者, 現場のPT及び当院の病棟職員に対し, 意識調査を行ったので報告する. 【対象と方法】対象は, 当院にて理学療法施行中で, 調査に協力可能な患者63名(男性23名, 女性40名, 平均年齢56.1±15.7歳), 当院を含む八女地区のPT42名(男性25名, 女性17名, 平均年齢28.0±6.1歳)当院の病棟職員88名(男性5名, 女性83名, 平均年齢32.6±22.9歳)である. 方法はPTの身だしなみに対する...

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Published in理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 110
Main Authors 田中剛, 吉村修, 田中真一, 富澤彰夫, 福田ひろか, 熊丸真理, 井上博子, 烏巣桂香, 村田伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2000
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ISSN0289-3770

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Summary:身だしなみは, 人の印象を決定する重要な要素であり, 対人関係を円滑に保つために必要最低限のマナーと考えられる. 今回, 理学療法士(以下PT)の身だしなみについて, 当院の患者, 現場のPT及び当院の病棟職員に対し, 意識調査を行ったので報告する. 【対象と方法】対象は, 当院にて理学療法施行中で, 調査に協力可能な患者63名(男性23名, 女性40名, 平均年齢56.1±15.7歳), 当院を含む八女地区のPT42名(男性25名, 女性17名, 平均年齢28.0±6.1歳)当院の病棟職員88名(男性5名, 女性83名, 平均年齢32.6±22.9歳)である. 方法はPTの身だしなみに対する質問紙調査で, アンケートの内容は, 茶髪, 指輪, ピアス, 香水, 化粧, マニキュア, など15項目からなり, 質問は全て「~していてもよい. 」の文章構成とし, 回答は「そう思う」「そう思わない」の2件法で選択してもらった. 回答の「そう思う」「そう思わない」をそれぞれ1点, 0点, と得点化(満点:15点)し, 合計点を尺度得点とした. 統計処理には, 一元配置分散分析を用い, 危険率5%未満を有意とした. 【結果】患者の身だしなみの尺度得点は6.73±2.66, PTの身だしなみの尺度得点は7.90±3.78, 病棟職員の身だしなみの尺度得点は6.84±3.28にて有意差は認められなかった. 項目別として, 三者とも肯定的な回答が過半数を越えた項目は「女性の茶髪」「女性のピアス」「女性の化粧」「白衣の下のカラーシャツ」の4項目であった. <患者の回答>各項目において, 前述した項目以外で肯定的な回答が過半数を越えたものは, 「男女の指輪」「カラーの靴下」の7項目であった. <PTの回答>各項目において, 前述した項目以外で肯定的な回答が過半数を越えたものは, 「男性の茶髪」「男女の香水」の7項目であった. <病棟職員の回答>各項目において, 前述した項目以外で肯定的な回答が過半数を越えたものは, 「男性の茶髪」「男女の指輪」の7項目であった. また, 3者とも否定的な回答が多かったのは, 「男性のピアス」「マニキュア」「伸びた爪」「無精ひげ」の4項目であった. 【考察及びまとめ】身だしなみ尺度得点は, 三者とも特に有意差は認められなかった. このことから, 我々PTは常識的な身だしなみ感覚を備えていると思われる. しかし, 各項目間においては, 差が現れたところもあった. まず, 「女性の茶髪」「女性のピアス」「女性の化粧」「カラーシャツ」のように三者とも肯定的な回答が過半数を越えた項目があった. これは, 患者やPT, 病棟職員の身だしなみに対する意識が寛容的になっているからと思われる. また, 「男女の茶髪」「男性の長髪」においては, PT及び病棟職員に比べ患者は否定的な回答が多く, 「香水」に関しては, PTに比べ, 患者や病棟職員は否定的な回答が多かった. このように, 自分達PTは肯定的に認識していることが, 患者や病棟職員には否定的に認識されていることがある. これは最近のおしゃれとしての「茶髪」「長髪」をPTが身だしなみとして認識しているためと思われる. 患者を治療する上で, その技術をみがくことは大事であるが, それ以前に良い信頼関係を築くためにも, 身だしなみについて再度考えてみる必要があると感じた.
ISSN:0289-3770