自動介助訓練装置の開発と使用経験

麻痺側の随意性が低い脳卒中片麻痺(以下片麻痺)に対する理学療法としては, 随意性の改善を目的に自動介助訓練を繰り返し行なう場合が多い. 我々はセラピストによる他動運動を記憶・再現する新しい連続的他動運動装置(Therapeutic Exercise Machine:TEM)を開発し, 連続的他動運動が筋緊張軽減に効果的であることを報告してきた. このTEMに連続的自動介助訓練が可能な機構を新たに装備し, 第34回本学会でその概要について紹介した. 今回は片麻痺患者に対しTEMによる連続的自動介助訓練を実施し, 経時的変化について検討を加えたので報告する. TEMはセラピストが教示した運動を正確...

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Published in理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 73
Main Authors 内田成男, 瀧昌也, 小寺貴子, 白川里砂, 田中尚文, 岡島康友, 榊泰輔, 岡田誠一郎, 堀内敏夫, 富田豊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2000
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ISSN0289-3770

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Summary:麻痺側の随意性が低い脳卒中片麻痺(以下片麻痺)に対する理学療法としては, 随意性の改善を目的に自動介助訓練を繰り返し行なう場合が多い. 我々はセラピストによる他動運動を記憶・再現する新しい連続的他動運動装置(Therapeutic Exercise Machine:TEM)を開発し, 連続的他動運動が筋緊張軽減に効果的であることを報告してきた. このTEMに連続的自動介助訓練が可能な機構を新たに装備し, 第34回本学会でその概要について紹介した. 今回は片麻痺患者に対しTEMによる連続的自動介助訓練を実施し, 経時的変化について検討を加えたので報告する. TEMはセラピストが教示した運動を正確に再現し, 運動のスピードと回数を自由に設定できる運動療法装置であり, 大腿部と下腿部を独立に支持する双腕リンク機構から構成されている. TEMによる自動介助訓練はセラピストが運動を教示し, 訓練内容を決定した後, 患者がその運動を行なうことで開始される. TEMは患者の下肢から発生する力を常に計測し, その力の大きさに対応して適切な介助量で患者の運動を支援する機構となっている. また, 患者が発生させる力に応じて, 音のリズムが変化するというバイオフィードバック機構も組み入れられている. すなわち, セラピストが教示した内容で, 自動介助運動を繰り返すことにより, 患者の随意的な運動能力を高めようとするものである. 対象:片麻痺患者3名で, いずれも仰臥位にて下肢の屈伸運動を十分に行なうことができないレベル(SIASの麻痺側運動機能ではすべて2点以下)である. 方法:患者は仰臥位にて麻痺側下肢をTEMに設置され, セラピストが下肢の屈伸運動をTEMに教示した後, 20~30回の自動介助運動を行なう. この訓練は1週間に3~5セット実施した. 運動中の関節角度と関節トルク(股関節・膝関節)はTEHに内臓された力センサーより算出した. これらの値と麻痺側運動機能をTEMによる訓練開始時および終了時で比較検討した. 関節角度は3名とも, ほぼ一定した運動範囲を保ち運動を遂行していた. 関節トルクは各患者で一定のパターンを示さなかったが, 他動運動時とは明らかに異なり, いずれも逆方向へのトルク出力が観察された. また, 訓練終了時には関節トルクは増大し, 麻痺側運動機能のスコアも1から3ポイント改善していた. 自動介助運動を繰り返し行なう場合には, 患者の随意的運動能力を最大限に発揮させ, 正常な運動パターンを学習させることが望ましい. 今回, 関節トルク発生パターンより, TEMは患者の能力に見合った介助量で下肢の自動介助訓練を遂行していると推察された. また, 患者が運動について自ら認知しなければならず, セラピストによる訓練とは異なった効果が期待できると思われた.
ISSN:0289-3770