歩行中の調節モーメントよりみたオフセット杖と前腕杖および松葉杖の効果

片側への松葉杖, 前腕杖, オフセット杖の使用が, 反対側下肢に与える効果について歩行分析から検討する. 膝と足関節に障害のない末期変形性股関節症で, 人工股関節置換術を施行し退院時に歩行分析を実施した女性7例(平均年齢59.31±14.8歳)である. 対照群は, 健常女性10例(平均年齢62.0±7.3歳)である. 歩行分析は, VICON370(Oxford metrics社製)とAMTI社製床反力計を用い, データ解析にはVCMソフト使用した. 歩行条件は, 健側に松葉杖を使用した片松葉杖歩行(以下A杖), Lofstrand crutch歩行(以下L杖), offset cane歩行(...

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Published in理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 63
Main Authors 佐々木伸一, 野瀬恭代, 嶋田誠一郎, 大森弘則, 和田真, 馬場久敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2000
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Summary:片側への松葉杖, 前腕杖, オフセット杖の使用が, 反対側下肢に与える効果について歩行分析から検討する. 膝と足関節に障害のない末期変形性股関節症で, 人工股関節置換術を施行し退院時に歩行分析を実施した女性7例(平均年齢59.31±14.8歳)である. 対照群は, 健常女性10例(平均年齢62.0±7.3歳)である. 歩行分析は, VICON370(Oxford metrics社製)とAMTI社製床反力計を用い, データ解析にはVCMソフト使用した. 歩行条件は, 健側に松葉杖を使用した片松葉杖歩行(以下A杖), Lofstrand crutch歩行(以下L杖), offset cane歩行(以下O杖), 杖を使用しない自由歩行(以下自由)とし, 裸足にて8mの歩行路上を2回づつ歩かせ計測した. 測定項目は, 杖に加わる床反力と歩調, 歩行速度, 歩幅, 歩行中の股・膝・足関節の外部モーメント(以下M)を測定した. 1. 杖に加わる垂直分力(単位%体重):A杖19.3, L杖15.0, O杖で平均10.5と各校間に有意差を認めた. 2. 時間および距離因子:歩調はA杖101歩/分, L杖100, O杖102, 自由105, 歩行速度はA杖0.74m/秒, L杖0.72, O杖0.76, 自由0.74, 歩幅はA杖44m, L杖43, O杖45, 自由43cで各校間に差はなかった. 3. 関節モーメント(Nm/kg):股屈曲Mは, 各杖間に差はなくA杖0.33, L杖0.33, O杖0.33, 自由0.33, 伸展Mも差はなくA杖0.64, L杖0.63, O杖0.65, 自由0.64, 対照群0.60である. 内転Mは, 杖で有意に低下しA杖0.38, L杖0.31, O杖0.50, 自由0.63, 対照群0.80であった. 膝屈曲Mは, A杖0.44, L杖0.42, O杖0.41, 自由0.50, 対照群0.36と杖で低下していた. 伸展MはA杖0.20, L杖0.18, O杖0.20, 自由0.20, 対照群0.31と対照群より低下していた. 内反Mは, A杖0.14, L杖0.14, O杖0.17, 自由0.23, 対照群0.39で対照群と自由および杖に有意差を認めた. 足背屈Mには, 杖による差はなくA杖0.96, L杖0.95, O杖1.09, 自由1.00であったが, 対照群1.23より有意に低下していた. 底屈Mは, 全て差はなくA杖0.03, L杖0.03, O杖0.03, 自由0.03, 対照群0.04であった. 松葉杖からオフセット杖と短くなるに従い荷重量が減少するのは, 杖による固定関節数の減少による. 歩調などに変化が認められないのは, 杖の駆動力が小さいことと退院時に下肢駆動力が十分回復していたと考えられた. 杖使用による股内転Mと膝内反Mの減少は, 関節中心から杖までのレバーアームが延長し, 重心による回転Mに対し杖による逆回転Mが大きくなったためと推察できる. 股と膝屈曲・伸展Mに杖の効果が小さいのは, 矢状面では杖と反対側下肢関節の位置が近く, 関節中心から杖までのレバーアームが短いためと考えられる.
ISSN:0289-3770