骨格筋萎縮がin vivoにおける筋紡錘の刺激応答性に及ぼす影響

【目的】筋萎縮に対する理学療法は筋力強化訓練を中心とした筋力回復を主体としておこなわれ, 感覚面を主体としたアプローチは少ない. 近年, 筋萎縮に伴う感覚器の変化について形態学的に検証した報告が散見されるようになっており, 筋紡錘の機能変化や筋萎縮に対する治療法についての検証が望まれている. しかし, 筋萎縮時の感覚器の変化について生体内(in vivo)での活動を報告した研究は少なく, 筋萎縮時の筋紡錘の機能については不明瞭である. そこで, 本研究ではin vivoで骨格筋内に存在する筋紡錘の活動を導出して, 関節の動きに伴う筋紡錘の活動について, 正常筋と萎縮筋との比較をおこなった. 【...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 37
Main Authors 藤野英己, 武田功, 祢屋俊昭, 秋山純一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2000
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【目的】筋萎縮に対する理学療法は筋力強化訓練を中心とした筋力回復を主体としておこなわれ, 感覚面を主体としたアプローチは少ない. 近年, 筋萎縮に伴う感覚器の変化について形態学的に検証した報告が散見されるようになっており, 筋紡錘の機能変化や筋萎縮に対する治療法についての検証が望まれている. しかし, 筋萎縮時の感覚器の変化について生体内(in vivo)での活動を報告した研究は少なく, 筋萎縮時の筋紡錘の機能については不明瞭である. そこで, 本研究ではin vivoで骨格筋内に存在する筋紡錘の活動を導出して, 関節の動きに伴う筋紡錘の活動について, 正常筋と萎縮筋との比較をおこなった. 【対象と方法】実験動物としてWistar系雄ラット21匹(10週齢, 体重291.4±2.9g)を使用した. これらのラットを無作為に抽出して, 対照群(CONT群, n=7), 懸垂群(HS群, n=7)およびギプス固定群(CAST群. n=7)の3群に分別し, 2週間の飼育, 負荷をおこなった. 本研究に使用したHS群とCAST群は筋萎縮モデルである. ラットを麻酔(pembarbital sodium, 50mg/kg,i.p.)した後に, 本研究での対象筋であるヒラメ筋の支配神経を同定し, 白金双極電極から求心性インパルスを単放電もしくは群放電として導出した. 刺激応答性により筋紡錘の活動を分別し, インパルスを生体電気増幅器(AVB-21, 日本光電)で増幅した. 得られたシグナルを20kHzでA/D変換して, パーソナルコンピュータで解析した. また, ラットの足部および下腿を他動運動装置に固定し, ramp and hold stretch負荷(足関節底屈位~90°背屈位)を足関節に施行した. 【結果と考察】CONT群では, 関節角度の変化に対する筋紡錘の活動頻度に高い相関性が認められた. 関節角度と筋紡錘の活動頻度との回帰分析の結果, CONT群では一次関数的な増加を示し, HS群でも一次関数的な増加を示した. しかし, 関節角度にともなう筋紡錘の活動頻度を表す係数はCONT群と比較して, 高値となった. これは関節角度変化に対して, 筋紡錘が過度に活動していることを意味し, 筋からの角度変化情報が正確に伝達されないことが推察される. 次にramp後にhold状態を維持するとCONT群では筋紡錘の活動頻度は減少を示した. これは筋の粘弾性により, 筋紡錘の伸張が緩むことで生じている現象であるが, HS群ではhold直後の活動頻度の減少は認められなかった. この結果から筋の粘弾性が低下するなどの筋性質の変化が萎縮筋に存在することが示唆された. 一方, CAST群では, CONT群やHS群のように関節角度に応じた筋紡錘の一次関数的な増加は認められず, 背屈角度が小さい場合でも過度な反応を示した. しかし, 背屈角度が大きい場合に関節角度変化に応じた応答性を示さなかった. この結果からギプス固定により筋紡錘の機能に著明な変化が現れることが示唆された.
ISSN:0289-3770