AFO力脳卒中片麻痺患者の麻痺側筋活動に与える影響

脳卒中片麻痺患者の治療において, 装具療法の占める割合は大きい. しかし, 装具が麻痺筋に与える影響は明確ではない. そこで今回我々は, 装具装着による脳卒中片麻痺患者の歩行時における筋活動変化より, 装具が麻痺筋に与える影響を調べ, 若干の知見を得たので報告する. 【対象と方法】当院入院中の脳卒中片麻痺患者のうち, 監視から軽介助歩行レベルの者で, 指示理解に問題がなく, 本研究の参加を同意した6名(男性3名, 女性3名), 発症からの期間は平均5.2か月(3~7か月), 平均年齢57.8歳(51~64歳)である. 右片麻痺:3例, 左片麻痺3例, 下肢機能回復段階はBr-st III 2例...

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Published in理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 31
Main Authors 濱田真弓, 沖山努, 三橋弘昌, 柳本智, 酒本美樹, 二田梨江
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2000
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Summary:脳卒中片麻痺患者の治療において, 装具療法の占める割合は大きい. しかし, 装具が麻痺筋に与える影響は明確ではない. そこで今回我々は, 装具装着による脳卒中片麻痺患者の歩行時における筋活動変化より, 装具が麻痺筋に与える影響を調べ, 若干の知見を得たので報告する. 【対象と方法】当院入院中の脳卒中片麻痺患者のうち, 監視から軽介助歩行レベルの者で, 指示理解に問題がなく, 本研究の参加を同意した6名(男性3名, 女性3名), 発症からの期間は平均5.2か月(3~7か月), 平均年齢57.8歳(51~64歳)である. 右片麻痺:3例, 左片麻痺3例, 下肢機能回復段階はBr-st III 2例, IV 3例, V 1例であった. 装具は全例AFOであり, 杖等の使用は制限せず, 装具装着時及び非装着時それぞれ10m歩行を行わせた. その間の麻痺側膝関節伸筋群, 屈筋群, 足関節背屈筋群, 底屈筋群の歩行時筋活動を, NECメディカルシステムズ社製筋電計SYNA ACT MT11を用いて記録した. データの収集は至適速度の歩行で, 数回の練習後に行った. 電極の貼付に際しては十分皮膚の処理を行い, 歩行中に電極が不安定になることを防ぐため, 電極とコードをアンダーラップで固定した. 装具の有無によって得られた筋電図原波形を比較し, 6名中5名以上のPTが明らかに異なると判断したものを変化あり, その他は変化なしと判定し, 同時に歩容の変化も記録した. 【結果および考察】脳卒中片麻痺患者の筋電図原波形から, 痙性と随意収縮を見分けることは困難である. そこで歩容の変化と併せて検討した. 装具により直接的な影響を受ける足関節で, 背屈筋群において6例中3例は装具装着により筋活動が小さくなった. これらの症例は, 非装着時に内反を生じていたが, 装具装着により改善した. また他の3例も装具装着により内反は軽減したが, 背屈筋群の活動は変化なかった. さらに全症例において, 底屈筋群の活動に変化なかった. これらの結果より, 装具装着によって異常歩行をコントロールすることは可能でも, 筋活動をコントロールすることが困難である症例も存在すると考えられる. 歩行時の膝関節支持性についてみると, 6例中5例で装具装着により改善が得られ, 3例においてスナッピングが軽減した. 改善した5例中4例は, 装具装着時の膝伸筋群の筋活動が大きくなっていた. 装具装着時は非装着時と比較して, 立脚期の床反力作用線は膝関節の後方を通るため膝屈曲モーメントが生じ, これに対抗する目的で膝伸筋群の筋活動が増加したと考えられる. また, 膝屈筋群には一定の傾向が認められず, 筋活動が変化のない者や減少した者もあった. このことから, 装具は膝伸筋群に対して影響を与えているものの, 屈筋群に対する影響は少ないと考えられる. 今回は対象となった症例数が少なく傾向をみるにとどまったが, 今後さらに症例を増やし, 装具療法の科学性を高めていきたい.
ISSN:0289-3770