早期産児の理想環境とは
【目的】早期産児は神経系の発達が未成熱なため, ストレスフルな医療環境の中, 安静を保持することが困難で, その状態は発達や呼吸調整に影響することが示唆されている. その方略の1つとして, 児の環境を胎内に近づけるような, 胎児姿勢を早期からとらせるポジショニングが推奨されているが, その効果に関しては何ら科学的裏付けがされていない. ポジショニングが児の自律神経系に与える影響を, 覚醒状態尺度と心拍変動のスペクトル解析を用いて評価した. 【対象】当院新生児科に入院した, 明らかな神経学的異常所見を認めなかった極低出生体重児(早期産児)1例(症例T.T, 在胎週数:28週2日, 出生体重:11...
Saved in:
Published in | 理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 9 |
---|---|
Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
2000
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0289-3770 |
Cover
Summary: | 【目的】早期産児は神経系の発達が未成熱なため, ストレスフルな医療環境の中, 安静を保持することが困難で, その状態は発達や呼吸調整に影響することが示唆されている. その方略の1つとして, 児の環境を胎内に近づけるような, 胎児姿勢を早期からとらせるポジショニングが推奨されているが, その効果に関しては何ら科学的裏付けがされていない. ポジショニングが児の自律神経系に与える影響を, 覚醒状態尺度と心拍変動のスペクトル解析を用いて評価した. 【対象】当院新生児科に入院した, 明らかな神経学的異常所見を認めなかった極低出生体重児(早期産児)1例(症例T.T, 在胎週数:28週2日, 出生体重:1148g, Apgar Score:7/8(1分/5分), 修正週数:34週1日~35週2日, 状況:医療固定なし)を対象とし, 観察を行った. 【方法】心電図モニター(日本光電:ライフスコープ8)を装着し, 1シリーズにつき, 非ポジショニングとポジショニングを順不同で連続して3時間ずつ行った. 合計8シリーズの心拍データとビデオ画像から, その間の1分毎の覚醒状態(state)を評価し, 心拍変動のゆらぎ成分を最大エントロピー法で解析した. 両群のstateの有意差検定にはMann-WhitneyのU検定, ゆらぎ成分(LF(交感神経指標)・HF(副交感神経指標)・LF/HF(交感神経優位指標))の検定にはStudentのT検定を用いた. 【結果】ポジショニングにより, 1. 全シリーズで有意にstateが低下した. 2. 8シリーズ中6シリーズでLFが, 7シリーズでHFが有意に低下した. 3. 8シリーズ中6シリーズでLF/HFが有意に高かった. 【結語】ポジショニングした場合, 心拍変動においては交感神経優位の指標が優勢となり, あたかも安静度が低下したかのような結果となったが, 実際のstateは有意に低下した. 一見逆説的な結果であるが, ポジショニングによって主に動睡眠が増加していると考えると, 交感神経成分の増加は充分予想される. 動睡眠は, 大脳の発達に密接な関係のある睡眠成分であり, ポジショニングによって, 早期産児に一つの理想的な発育・発達環境を提供できる可能性が示唆された. |
---|---|
ISSN: | 0289-3770 |