高校女子バレーボール部員の跳躍解析
【はじめに】スポーツ選手に対するメディカルチェックの目的は, スポーツ傷害の予防や生命に影響を及ぼす潜在的な危険因子の発見を行うことで事故を未然に防ぎ, 競技力向上を図ることである. 今回我々は, 高校女子バレーボール部員を対象に, バレーボールの競技特性や選手の身体特性から, バレーボールのスポーツ障害で頻度の高いジャンパー膝の要因を探ることを目的に以下の調査を行った. 【対象と方法】平成10年度全国高校バレーボール各大会で上位入賞(すべて8位以内)するA高校女子選手12名(平均身長163.4cm, 平均体重57.6kg)である. 対照群は他高校女子運動部員39名(平均身長158.6cm,...
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Published in | 理学療法学 Vol. 26; no. suppl-1; p. 126 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
1999
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Summary: | 【はじめに】スポーツ選手に対するメディカルチェックの目的は, スポーツ傷害の予防や生命に影響を及ぼす潜在的な危険因子の発見を行うことで事故を未然に防ぎ, 競技力向上を図ることである. 今回我々は, 高校女子バレーボール部員を対象に, バレーボールの競技特性や選手の身体特性から, バレーボールのスポーツ障害で頻度の高いジャンパー膝の要因を探ることを目的に以下の調査を行った. 【対象と方法】平成10年度全国高校バレーボール各大会で上位入賞(すべて8位以内)するA高校女子選手12名(平均身長163.4cm, 平均体重57.6kg)である. 対照群は他高校女子運動部員39名(平均身長158.6cm, 平均体重52.9kg)とした. 跳躍動作の解析として, (1)下肢瞬発力として片脚で最大跳躍し片脚で着地した際の床反力データを求めた. (2)下肢緩衝能として30cm台から出来るだけ衝撃が少なくなるように指示し床反力計上に片脚で飛び降りさせ, 着地時の床反力データを求めた. 得られたデータから(1)は踏み切り時, (2)は着地時の最大垂直方向床反力値から体重で除した値を算出した. なお, 各選手には十分な練習を行わせ後3回のデータを取り平均値を求めた. 次に, 6名のアタッカーには, 実際のコート内でスパイク動作を行わせ, 2方向からビデオ撮影を行った(Vctor TK-1280 60Hz). 床反力データと画像データは, Ariel社製APAS(Ariel Performance Analysis System)にて解析した. 筋力は, CYBEX770にて60,180,300deg/secでの等速性膝屈伸筋力を測定した. 統計処理は, 対応のないT検定を用い, 危険率5%以下を統計学的に有意とした. 【結果】床反力計での跳躍解析結果, (1)下肢瞬発力は, A高校右平均226.9±27.8%, 左220.4±24.1%, 対照群高校右平均214.0±22.7%, 左213.1±21.8%と有意な差は認めなかった. (2)下肢緩衝能A高校右平均280.9±28.3%, 左284.4±24.0%, 対照群高校右平均306.1±24.6%, 左306.9±29.1%とA高校が有意に低値を示し, 緩衝能が優れていた(P<0.05). 60deg/8ecでの筋力は, A高校:右伸展305.1±38.9%, 左伸展276.5±21.4%, 右屈曲134.3±23.0%, 左屈曲134.1±19.2%, 対照群:右伸展230.3±37.5%, 左伸展214.8±38.1%, 右屈曲108.3±23.5%, 左屈曲108.3±22.3%であり, 有意にA高校が高値を示した(P<0.01). また, 他の角速度も有意にA高校が高値を示した. 動作解析は膝の動きに注目し分析した. スパイク動作時の右膝にかかる負担(関節トルク)は, 209.9±86.5Nm, 左82.0±75.9Nmであり, 右膝へ負担のかかる時期は踏み切り期直前で膝角度は, 69.5±8.4度で最大角速度は500deg/secを越える選手が多かった. 【考察】今回我々は, バレーボール選手に見られるジャンパー膝の要因を客観的にとらえようとした. 片脚跳躍踏み切り時には体重の約2.2倍の荷重が垂直方向へ加わり, また着地時には約2.8倍もの荷重が加わっていた, スパイク動作中には右膝には, 200Nmを越える関節トルクが生じ, これらの点はジャンパー膝の客観的な要因であると考えられる. また, その強い衝撃に対し膝関節周囲筋を強化する事で対応しているものと考えられ, トレーニングの理想としては, 速い角速度での強い筋収縮が得られるプライオメトリックトレーニングが有効と思われる. |
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ISSN: | 0289-3770 |