脊髄損傷患者に対する告知について

【はじめに】当院では, 脊髄損傷患者が15%を占め, 治療を進めるに当たり, 予後に関する告知の問題が出てきている. 今回我々は患者及び家族が, 告知される事に対し, どの様に考え, 告知を望んでいるのかどうかを把握する為, アンケート調査を実施したので考察を含め報告する. 【対象及び方法】当院及び熊本機能病院を退院した, 外傷性脊髄損傷患者143人を対象に, アンケート調査を郵送により実施した. 【結果】(1)有効回答率は58%であった. アンケート時の平均年齢は49.3歳で, 頚髄損傷49人, 胸髄以下の損傷34人であった. (2)患者・家族共に8割近くが受傷後早期(術前から術後2ヶ月位の...

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Published in理学療法学 Vol. 26; no. suppl-1; p. 96
Main Authors 今泉久仁子, 槌田義美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 1999
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】当院では, 脊髄損傷患者が15%を占め, 治療を進めるに当たり, 予後に関する告知の問題が出てきている. 今回我々は患者及び家族が, 告知される事に対し, どの様に考え, 告知を望んでいるのかどうかを把握する為, アンケート調査を実施したので考察を含め報告する. 【対象及び方法】当院及び熊本機能病院を退院した, 外傷性脊髄損傷患者143人を対象に, アンケート調査を郵送により実施した. 【結果】(1)有効回答率は58%であった. アンケート時の平均年齢は49.3歳で, 頚髄損傷49人, 胸髄以下の損傷34人であった. (2)患者・家族共に8割近くが受傷後早期(術前から術後2ヶ月位の間)に告知を望んでいた. 理由は踏ん切りをつけ, 効率よいリハが出来る等であった. (3)「誰が告知をすべきか」に対し, 医師が71%と最も多く, 次にリハ担当者, 家族の順であった. (4)告知は行うべきで無いという意見は全体の6%で, 分からないといった意見は, 15.7%であった. 理由は, 意欲が下がる, 自分で気付く方が良い, 自殺を考える, といった内容であった. (5)告知に関する考えは, 年齢や性別, 配偶者や子供の有無, 退院時の職業・ADL状況, 損傷部位, 麻痺の種類などで特に有意な差は認められなかった. (6)実際告知をされた群は66%と多く, 医師により早期に行われていた. 中でも, リハ開始前後に集中していた. (7)告知をされなかった群, 或いは, 曖昧であった群の障害受容については, リハの進行状況で自分なりに気付いた, 同じ障害を持った患者を見て感じた, という意見が大半を占めていた. (8)告知あるいは障害受容後のリハに対する意欲の変化は, それぞれの群で同じ8割が, 出てきた, 変わらなかったという答えであった, (9)告知後立ち直るに当たっては, 期間的には様々で, 家族の励ましや, 同じ障害を持った患者との交流を必要としていた. 【考察】現在の医療は, 入院期間の短縮が大きな課題となっているが, 当院では, 脊髄損傷患者の入院期間は長く, その要因の1つとして告知の問題が考えられている. 患者及び家族の8割近くが, 受傷後早期に告知を望む傾向にあり, 1割以下が望んでいない結果であった. 障害を受容するに当たり, 一時的にショック期があるが, その後, リハヘの意欲の変化は増加する或いは変わらないと答えている. よって, 我々は効率良いリハを行う為にも, 告知をした方が良いと結論付け, 告知を実施している. また, 早期の告知が, 入院期間の短縮につながると思われるが, 患者の障害受容課程も慎重に考慮し, 我々が精神面でのサポートを行う事で, 患者・スタッフ間の充分な信頼関係が生まれると考える. また, 告知後家族の励ましは勿論, 同じ障害を持った患者との交流も, リハスタッフが積極的に促していく必要がある事を強く感じた.
ISSN:0289-3770