脳卒中患者に対する装具適用の判断について
【目的】脳卒中片麻痺患者に対し, 理学療法を施行する上で, 下肢装具の作製を考慮することがある. 装具の処方については, RPTの意見が重要視されたり, 作製全般を一任されている施設も少なくない. 今回, 患者の移動手段に影響すると思われる, 装具・補装具の作製の判断の相違について症例を通して検討したので, 報告する. 【方法】脳卒中患者1名に対して, 40分以内で10名のRPTが同時に評価を行った. 合計10名の患者の評価を行い, 装具を作製するかしないかの判断, 作製すると判断したRPTは, 装具の種類の選択を行った. 加えて, 将来の屋内移動手段が主に歩行となるか, 車椅子となるのかの予...
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Published in | 理学療法学 Vol. 26; no. suppl-1; p. 79 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
1999
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ISSN | 0289-3770 |
Cover
Summary: | 【目的】脳卒中片麻痺患者に対し, 理学療法を施行する上で, 下肢装具の作製を考慮することがある. 装具の処方については, RPTの意見が重要視されたり, 作製全般を一任されている施設も少なくない. 今回, 患者の移動手段に影響すると思われる, 装具・補装具の作製の判断の相違について症例を通して検討したので, 報告する. 【方法】脳卒中患者1名に対して, 40分以内で10名のRPTが同時に評価を行った. 合計10名の患者の評価を行い, 装具を作製するかしないかの判断, 作製すると判断したRPTは, 装具の種類の選択を行った. 加えて, 将来の屋内移動手段が主に歩行となるか, 車椅子となるのかの予測的な判断も行った. 得られた結果から, RPTによる判断の違いを検討した. Choenのkappa(κ)係数を求め, RPTの作製するか否かの判断の一致性も調べた. RPTは平均経験年数8年(1~25年), 入院中の脳卒中患者10名(男性4名・女性6名, 右片麻痺5名・左片麻痺5名)発症後平均16ヵ月(1~120ヵ月), 平均年齢67.5歳(43~89歳)であった. 【結果】10名のRPTが, 10名の患者に対して行った評価100件中, 装具を作製すると判断したのは50件, 作製しないと判断したのは50件であった. また, 将来の移動手段を歩行と判断したのは54件, 車椅子と判断したのは46件であった. 将来の移動手段を歩行と予測した54件中, 装具を作製すると判断したものが36件(66.7%)であった. 対して移動手段を車椅子と予測した46件中, 装具を作製すると判断したものが14件(30.4%)であった. 作製する装具の種類は, 将来の移動手段を歩行と判断した36件中, LLB3件・SLB10件・SHB23件であった. また, 移動手段を車椅子と判断した14件中, LLB6件・SLB3件・SHB3件・膝装具2件であった. 装具を作製するかしないかについて, 全員の判断が一致したのは, 患者10名中1名のみであった. 装具を作製するか否か, RPTの一致度をみるκ係数は, 0.291でfairであった. 高齢で重度障害患者では, 装具は作製しないと判断したRPTが多かった. 作製すると判断したRPTはLLBを選択する傾向があった. 比較的若い患者では, 装具を作製すると判断したRPTが多かったが, 選択する装具は多岐に及んでいた. 移動手段の予測について, RPT全員が一致したのは, 患者10名中6名で, 4名が歩行を, 2名が車椅子での移動手段の獲得が可能と判断した. RPTの判断の一致性は, 0.664でsubstantialの結果であった. しかし, 移動手段の予測が一致していても装具作製の有無, 選択した装具に違いが認められた. 【考察】今回の結果, 個々のRPTにより判断に相違があり, このことは, 患者の将来を左右する可能性がある. そのため, 我々は評価方法・考え方・価値観を見直していく必要性があるのではないか. |
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ISSN: | 0289-3770 |