レーザー照射による仙骨部刺激が下肢表面温度と深部温度に与える影響
【はじめに】近年, レーザー治療が慢性疼痛や自律神経障害などに対し有効な新しい治療手段となりつつある. その効果は星状神経節照射時の上肢の皮膚温, 血流量の変化などで有効性は紹介されている. 今回我々は, 仙骨部に直線偏向型近赤外線照射(SUPER LIZER:以下SL照射)を試み, 下肢表面皮膚温度と深部温度の変化について検討した結果, 若干の知見を得たので考察を加え報告する. 【対象と方法】対象は健常女性8名, 年齢25.4±2.5歳であった. 被検者は30分以上安静にし皮膚温度が安定したことを確認後皮膚温度の変化について記録した. SL照射を両側第2仙骨孔にBタイププローブにて出力90~...
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Published in | 理学療法学 Vol. 26; no. suppl-1; p. 60 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
1999
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | 【はじめに】近年, レーザー治療が慢性疼痛や自律神経障害などに対し有効な新しい治療手段となりつつある. その効果は星状神経節照射時の上肢の皮膚温, 血流量の変化などで有効性は紹介されている. 今回我々は, 仙骨部に直線偏向型近赤外線照射(SUPER LIZER:以下SL照射)を試み, 下肢表面皮膚温度と深部温度の変化について検討した結果, 若干の知見を得たので考察を加え報告する. 【対象と方法】対象は健常女性8名, 年齢25.4±2.5歳であった. 被検者は30分以上安静にし皮膚温度が安定したことを確認後皮膚温度の変化について記録した. SL照射を両側第2仙骨孔にBタイププローブにて出力90~100%, 照射時間2秒, 休止時間5秒の条件下で5分間サイクル照射した(SL照射値). 測定は, サーモグラフィーで膝より末梢部前面の皮膚温度を測定し, 深部温モニターで表面皮膚温度と皮膚面下1cmの部位の深部温度を膝蓋骨下端より5cm下外側部にプローブを取り付け, SL照射終了後30分まで経時的に5分間隔で記録した. SL照射は東京医研社製SUPER LIZER HA-550を用いた. 測定器は, サーモグラフィーがNEC三栄社製TH3100, 深部温モニターがテルモ社製コアテンプCTM205を用いて計測した. 予備測定として, 別の日に30分以上安静後, 5分間隔で30分間安静時の計測を行った(コントロール値). 【結果】(1)安静時のコントロール値, SL照射値の皮膚温度は, 測定日によって多少の違いはあったが, 有意差は認められなかった. (2)SL照射直後の皮膚温度は, 安静時より上昇したが, コントロール値との有意差は認められなかった. SL照射終了後も徐々に上昇し, 30分後の深部温度は0.3度上昇し有意差を認めた(P<0.05). (3)コントロール値とSL照射値の5分間隔の温度変化は, 表面皮膚温度と深部温度ともにSL照射群の方が有意に上昇した(P<0.05). (4)サーモグラフィーを用いての温度変化を観察したところ, 下腿部分の皮膚温度は上昇したが, 足部皮膚温の上昇は認められなかった. (5)被験者の自覚としては, SL照射時に骨盤から下肢にかけて走るような温感があり, SL照射終了後しばらくの間仙骨部, 腹部に温感の残るものが多かった. 【考察】臨床の中で一般に使用される物理療法は, その刺激中に生体の変化を起こすものが多く, 特に温熱刺激は刺激終了後温度が低下する場合が多い. 今回の研究において我々は, 両側第2仙骨孔にSL照射を行い照射時の温度上昇のみでなく, 照射終了後さらに深部温度が上昇するという結果を得た. 仙骨部の骨盤内臓神経, 骨盤神経叢は, 骨盤内臓, 外陰部などの血管の拡張を起こす. また, 甲田らは両側第2仙骨孔の鍼通電刺激で下肢血流量の増加を報告している. 我々の場合は両側第2仙骨孔へのSL照射であり刺激方法に違いがあるものの, 甲田らと同様の傾向が見られた. 今後SL照射後の深部温度の改善が, 循環障害による慢性疼痛や種々の訴えに対して有効である可能性が示唆されるので, 今後これらの症例に対して活用しその効果を検討していきたい. |
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ISSN: | 0289-3770 |