筋力測定器の信頼性の検討
【はじめに】運動療法を施行するうえで臨床上問題とされる筋力の評価は, 徒手筋力検査による0から6までの順位尺度でなされ, 現在でも広く利用されている. また等速度運動中の筋張力の測定が可能なトルク測定機器の導入により筋パフォーマンスの概念が形成されつつある. しかしトルク測定機器は高価なうえ, 操作が繁雑でもあり広く臨床応用されているとは言い難い. そこで近年, 定量的かつ利便なハンドヘルドダイナモメータ(HD)が注目されつつあるが, 再現性や精度に関する報告は多くない. そこで今回HDの再現性を評価し臨床上の有用性を検討する. 【対象】14歳から80歳(50±27歳)までの健常男性6例, 女...
Saved in:
Published in | 理学療法学 Vol. 26; no. suppl-1; p. 52 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
1999
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0289-3770 |
Cover
Summary: | 【はじめに】運動療法を施行するうえで臨床上問題とされる筋力の評価は, 徒手筋力検査による0から6までの順位尺度でなされ, 現在でも広く利用されている. また等速度運動中の筋張力の測定が可能なトルク測定機器の導入により筋パフォーマンスの概念が形成されつつある. しかしトルク測定機器は高価なうえ, 操作が繁雑でもあり広く臨床応用されているとは言い難い. そこで近年, 定量的かつ利便なハンドヘルドダイナモメータ(HD)が注目されつつあるが, 再現性や精度に関する報告は多くない. そこで今回HDの再現性を評価し臨床上の有用性を検討する. 【対象】14歳から80歳(50±27歳)までの健常男性6例, 女性8例の合計14例である. 【方法】測定筋は対象者の大腿四頭筋とハムストリングスと上腕二頭筋および上腕三頭筋とした. 測定肢位は大腿四頭筋とハムストリングスは椅子座位で膝関節90°屈曲位とし, 上腕二頭筋と上腕三頭筋は背臥位で上腕を体幹に接し肘関節90°屈曲位とした. 測定方法は被検者の関節に動きが生じない状態で, 検者が被検者の下腿と前腕のそれぞれ最大遠位部にHDをあて, 関節運動が生じない状態で各筋の等尺性収縮の筋張力を測定した. 同一被検者による3回の筋力測定を行い, 機器の再現性を検討した. また, 同一検者によるintra observer variationと異なる検者によるinter observer variationを併せて評価した. なお統計解析にはz検定と対応のあるt検定を用い, 有意水準は5%未満とした. 【結果】3回の測定の平均は各々76.0±29.7, 76.0±33.3, 76.1±33.2Nで有意差はなかった. 全対象者の測定筋力の変動係数は平均7.9±5.5%であった. また3回の測定値のそれぞれの相関係数は0.956(y=1.072x-5.498), 0.963(y=1.042x-4.853), 0.968(y=1.083x-6.221)(p<0.0001)でほぼy=xの直線に回帰した. 筋別の測定から求めた相関係数と回帰係数および変動係数のそれぞれの平均は上腕二頭筋が0.97±0.01, 1.07±0.10, 7.94±5.67%, 上腕三頭筋が0.97±0.02, 1.16±0.12, 8.09±4.30%, 大腿四頭筋が0.95±0.02, 1.06±0.09, 6.55±4.29%, ハムストリングスが0.97±0.01, 0.96±0.03, 8.96±7.52%で測定筋の違いによる差は認められなかった. 【考察】今回の検討で, 3回の測定での平均値に有意差を認めず, 変動係数も平均0.079±0.055と良好な再現性を認めた. また全対象者のintra observer variationとinter observer variationのそれぞれの相関係数は0.95以上と強い関連を認めた. 異なる筋の測定においても相関係数は0.95以上と強い相関を認め, また変動係数も平均で10%未満と良好な結果を得た. これらのことで, HDは同一対象者の経時的な筋力評価に臨床上応用可能な機器であることを明らかにした. |
---|---|
ISSN: | 0289-3770 |