CVAにおけるMotor ImpersistenceのADLに及ぼす影響

「目的」脳血管障害(以下CVA)の高次脳機能障害の中に随意的な運動の維持が困難となる症状がある. 閉眼, 開口, 舌挺出などの動作を行なわせると, その状態を維持することができず, さらに2つ以上の動作を同時に行なわせると, そのどちらかの動作が中断してしまうという症状で, これを1956年FisherがMotor Impersistence(以下MI)と命名した. このMIは劣位半球症状として主要な症状の1つであるにもかかわらず, 今までにADL, 治療に及ぼす影響, アプローチ方法等の報告が少ない. そこで今回我々は, MIがADLおよび理学療法の進行過程を阻害する因子の1つとして考え,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in理学療法学 Vol. 12; no. suppl; p. 78
Main Authors 久富祥生, 山本康稔, 冨永淳, 東郷富泰, 松波優一, 松岡陽二, 別府香奈子, 柳沢健
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 1985
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:「目的」脳血管障害(以下CVA)の高次脳機能障害の中に随意的な運動の維持が困難となる症状がある. 閉眼, 開口, 舌挺出などの動作を行なわせると, その状態を維持することができず, さらに2つ以上の動作を同時に行なわせると, そのどちらかの動作が中断してしまうという症状で, これを1956年FisherがMotor Impersistence(以下MI)と命名した. このMIは劣位半球症状として主要な症状の1つであるにもかかわらず, 今までにADL, 治療に及ぼす影響, アプローチ方法等の報告が少ない. そこで今回我々は, MIがADLおよび理学療法の進行過程を阻害する因子の1つとして考え, どのように影響を及ぼしているかについて検討を行なった. 「対象及び方法」当院に59年11月現在入院しているCVA患者で, 失語, 痴呆, 顔面失行症等でテスト不能の者を除いた84例を対象とした. MI検査は服部らの方法を用いた. 第1動作:閉眼維持15秒 第2動作:舌挺出維持15秒 第3動作:閉眼・舌挺出同時維持15秒判定はこの3動作のいずれかが維持できない場合を陽性とした. ADL検査は, 歩行, 車椅子(transfer driving)および食事について調査した. 歩行は介助・監視なしに院内で車椅子使用せず歩行できる者を独立歩行群, 車椅子transferは介助・監視なしに転倒の危険性がない者を自立群, drivingの自立群は前・後進, 右・左折が確実に行なえ, 健側上・下肢の協調性のある運転が可能な者とした. 食事については, 摂食時間(自力全量摂取時間の平均値), 食べこぼしについて検査を行なった. 併せて, その他の劣位半球症状(視空間失認, 構成失行, 半側身体失認, 着衣失行, 失書, 失算など)も調査した.
ISSN:0289-3770