9 頬部蜂窩織炎発症時の血液検査を契機に発見された小児白血病患者の1例

小児がんの新規登録者は毎年3000人程度で, 成人がんの約1%程度ときわめてまれな疾患である. 日本の小児がん発生率は1万人あたり1~1.5人で, 小児科専門医であっても一生の間に小児がんと診断する患者の数はそれほど多くないといわれている. 今回わたしたちは, 右頬部蜂窩織炎を発症し, 治療時の血液検査を契機に発見された小児白血病患者を経験したので, その概要を報告する. 患者は, 8歳女児で右頬部腫脹を主訴に当科を受診した. 既往歴としては, 無治療の喘息と生後3か月より神経線維腫症と診断されていた. 現病歴は, 当科初診の1週前から右頬部腫脹, 疼痛を認めており, 近医小児科より当院小児科...

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Published in小児口腔外科 Vol. 20; no. 1; p. 71
Main Authors 新田哲也, 渡邉拓磨, 植野高章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 2010
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ISSN0917-5261

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Summary:小児がんの新規登録者は毎年3000人程度で, 成人がんの約1%程度ときわめてまれな疾患である. 日本の小児がん発生率は1万人あたり1~1.5人で, 小児科専門医であっても一生の間に小児がんと診断する患者の数はそれほど多くないといわれている. 今回わたしたちは, 右頬部蜂窩織炎を発症し, 治療時の血液検査を契機に発見された小児白血病患者を経験したので, その概要を報告する. 患者は, 8歳女児で右頬部腫脹を主訴に当科を受診した. 既往歴としては, 無治療の喘息と生後3か月より神経線維腫症と診断されていた. 現病歴は, 当科初診の1週前から右頬部腫脹, 疼痛を認めており, 近医小児科より当院小児科を紹介受診したところ, 血液検査後に歯性感染を疑われ精査加療目的に当科へ紹介された. 当科初診時の顔貌は左右非対称で右頬部から鼻翼, 上唇にかけての局所熱感を伴ったびまん性の腫脹と圧痛を認めた. 口腔内所見では, 右上顎中切歯と側切歯の唇側根尖部は腫脹し圧痛著明であった. レントゲン検査では右上顎中切歯と側切歯根尖部を含む類円形の骨透過像を認め, 境界は比較的明瞭であった. 血液検査所見ではWBC 9300/μl, CRP 1.4mg/dlで軽度上昇を認めていた. 右上顎前歯根尖病変からの右頬部蜂窩織炎と診断し, 入院下での消炎療法を開始した. 入院翌日, 末梢血液像を含む検査を施行したところ, 異形細胞の出現が認められ, 再検査でもリンパ芽球様細胞が確認された. 当科退院後の小児科における骨髄検査で, 急性骨髄性白血病と診断された. 右上顎前歯部顎骨内病巣は, 小児科でのがん化学療法施行予定を考慮して摘出術を実施し, 病理組織学的に肉芽腫病変と診断された. 転院後に抗がん剤化学療法, その後に同胞からの骨髄移植を受けたが, 右上顎前歯部病変の再燃はなく同部の経過は良好である.
ISSN:0917-5261