小児に発生したエナメル上皮線維腫を伴うエナメル上皮種の1例

歯原性腫瘍はオルソパントモX線の普及により比較的早期に発見されるようになった. なかでも上皮性のエナメル上皮腫はその報告も多く発生頻度が高いようであるが, 混合性のエナメル上皮線維腫が発生することは比較的稀であるといわれている. 最近, 私たちは小児下顎に発生した周辺部にエナメル上皮線維腫を伴ったエナメル上皮腫の1例を経験したので, 稀な症例と考え, その概要を報告した. 患者は5歳男児で1988年8月, 下頬部の無痛性腫脹を主訴として当科を紹介され受診した. 口腔内所見では右側下顎乳臼歯部より下顎枝にかけて, 頬舌側に骨様硬の膨隆を認めたが, 被覆粘膜は健常であった. X線所見では右側下顎第...

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Published in小児口腔外科 Vol. 1; no. 2; p. 66
Main Authors 飯島美子, 木住野義信, 北村信隆, 米津博文, 松崎英雄, 中野洋子, 大畠仁, 高野伸夫, 重松知寛, 陳盛輝, 井上孝, 下野正基, 鬼谷信美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 1991
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Summary:歯原性腫瘍はオルソパントモX線の普及により比較的早期に発見されるようになった. なかでも上皮性のエナメル上皮腫はその報告も多く発生頻度が高いようであるが, 混合性のエナメル上皮線維腫が発生することは比較的稀であるといわれている. 最近, 私たちは小児下顎に発生した周辺部にエナメル上皮線維腫を伴ったエナメル上皮腫の1例を経験したので, 稀な症例と考え, その概要を報告した. 患者は5歳男児で1988年8月, 下頬部の無痛性腫脹を主訴として当科を紹介され受診した. 口腔内所見では右側下顎乳臼歯部より下顎枝にかけて, 頬舌側に骨様硬の膨隆を認めたが, 被覆粘膜は健常であった. X線所見では右側下顎第一乳臼歯相当の下顎体部より下顎枝にいたる境界明瞭な単房性のX線透過像を認め, 内部に右側下顎第一大臼歯の歯冠を包含していた. 1988年9月, 全身麻酔下にまず試験的穿刺を行い, 黄色漿液性の内容液を吸引した後, 生検を兼ね全摘出を行い, 一層骨を削去した. 病理組織検査では歯原性腫瘍で2つの組織型が存在していた. すなわち, 中心部ではエナメル上皮腫, 周辺部ではエナメル上皮線維腫で更にその周囲に被膜を認め, 3層構造を呈していた. 術後2年経過した現在, 腫瘍摘出部は正常骨で満たされており, 経過は良好である. 以上, 5歳小児に発生したエナメル上皮線維腫を伴うエナメル上皮腫の一例を経験したので病理組織学的考察を中心に報告した.
ISSN:0917-5261