9 腰部交感神経節ブロック時に生じた椎体梗塞の1例

腰部交感神経節ブロックは血行障害や交感神経が関与する病態の治療に適応されている. このブロックの主な合併症は, 陰部大腿神経炎, 神経根障害, 射精障害などが挙げられる. 今回, われわれはアルコールによる腰部交感神経節ブロック時に椎体梗塞を生じたので報告する. 患者は45歳の女性であった. 20年来の両下腿の難治性皮膚潰瘍の治療を受けていた. 29歳時, 両側の腰部交感神経節ブロックの既往があった. 1年前下腿潰瘍の治療目的に両側腰部交感神経節ブロックを当科で行った. 両側下腿の皮膚潰瘍が再発したので, 今回両側腰部交感神経節ブロックを予定した. なお, 神経ブロックは両側同時には行わなかっ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 18; no. 4; p. 420
Main Authors 坪田信三, 藤井知美, 桧垣暢宏, 武智健一, 萬家俊博, 渡辺敏光, 長櫓巧
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 2011
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:腰部交感神経節ブロックは血行障害や交感神経が関与する病態の治療に適応されている. このブロックの主な合併症は, 陰部大腿神経炎, 神経根障害, 射精障害などが挙げられる. 今回, われわれはアルコールによる腰部交感神経節ブロック時に椎体梗塞を生じたので報告する. 患者は45歳の女性であった. 20年来の両下腿の難治性皮膚潰瘍の治療を受けていた. 29歳時, 両側の腰部交感神経節ブロックの既往があった. 1年前下腿潰瘍の治療目的に両側腰部交感神経節ブロックを当科で行った. 両側下腿の皮膚潰瘍が再発したので, 今回両側腰部交感神経節ブロックを予定した. なお, 神経ブロックは両側同時には行わなかった. 右腰部交感神経節ブロックは, 透視下に第2, 3腰椎レベル(L2, L3)で行った. 特にL2レベルでは, 血液の逆流を何度も認め難渋した. 椎体の前縁に針を進め, 造影を行った結果, 血管内への広がりがないことを確認した. 2%リドカインでテストブロック後, 1椎体あたり無水エタノール1.5mlを注入した. L2の注入時, 腰背部の鈍痛を訴えた. 痛みは徐々に強くなりエタノール注入1時間後がピークで2時間ほど継続し, ペンタゾシンを計30mgの投与を行った. 痛みはL4とL5の棘突起周囲が押しつけられるような感じであると表現され, 安静にすることが困難な状況であった. 経過中, 下肢の知覚や運動などに関して神経学的な異常所見は認めなかった. ブロック翌日, 歩いて退院した. 背部の鈍痛はブロック2週間後の診察時点でも継続していたのでMRI検査を行った. その結果L2椎体の右側の椎体梗塞と診断した. 椎体梗塞に関して整形外科と相談したところ経過観察とした. 半年後には椎体の欠損部分の骨化を認めた. 「考察・結語」: 血管が造影されていないにもかかわらず, エタノールによる動脈の障害の結果と考えられる椎体梗塞を経験した. 神経破壊薬の注入は慎重に判断し, かつ慎重に行わなければいけない.
ISSN:1340-4903