神経ブロック 星状神経節ブロック

星状神経節ブロック(SGB)は, ペインクリニックにおける最も基本的な治療手段のひとつである. わが国の各施設での普及度は高く, しかも比較的安全に施行されていると考えるが, 重篤な合併症の報告もあり, 施行には細心の注意を要する. 施行上重要なのは, 効果的なブロック手技であることと, 合併症のないブロック手技であるということの2点である. 効果的なSGBを行うには, 体位, 頚椎横突起の触知, 刺入点の決定, 穿刺法, 注入法, の各要素について考察が必要である. また合併症はおもに, 血管などの誤穿刺や不正確な針先の位置による合併症, 感染による合併症, 交感神経遮断に基づく合併症, 局...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 10; no. 3; p. 299
Main Author 川井康嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 2003
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ISSN1340-4903

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Summary:星状神経節ブロック(SGB)は, ペインクリニックにおける最も基本的な治療手段のひとつである. わが国の各施設での普及度は高く, しかも比較的安全に施行されていると考えるが, 重篤な合併症の報告もあり, 施行には細心の注意を要する. 施行上重要なのは, 効果的なブロック手技であることと, 合併症のないブロック手技であるということの2点である. 効果的なSGBを行うには, 体位, 頚椎横突起の触知, 刺入点の決定, 穿刺法, 注入法, の各要素について考察が必要である. また合併症はおもに, 血管などの誤穿刺や不正確な針先の位置による合併症, 感染による合併症, 交感神経遮断に基づく合併症, 局所麻酔の局所, 全身作用に基づく合併症, などがあげられ, これらの点に配慮した手技を行うべきである. SGBの対象患者には全例, 施行開始前に血液検査を施行し, 出血傾向と感染所見がないことを中心に評価する. SGB施行中に全身状態が不良であったり, 感染の徴候がある場合は, その都度血液検査で異常がないことを確認してから行う. SGBの施行は, 頭部のみが下降する神経ブロック台で行う. 消毒は原則的に2回施行(エチルアルコールとポビドンヨード)で行い, 清潔のゴム手袋を使用している. 右側のSGBを行うときは患者の右側に, 左側のSGBを行うときには患者の頭側に立つ. 第6頚椎横突起(C6横突起)を目標として穿刺するSGB(C6SGB)と, 第7頚椎横突起(C7横突起)を目標として穿刺するSGB(C7SGB)のどちらも, 示指と中指で第6頚椎横突起をまず触れる. 頚部の緊張をとるために軽く開口させることがある. 穿刺前に患者の眼前に針を持ってこないように配慮し, リラックスを促す会話を行いながら施行すると良いと思われる. C6SGBでは示指と中指の間から穿刺し, 骨に当たるまで進める. C7SGBでは, 右側では中指のみ, 左側では示指のみでC6横突起を触知するように少し指先をスライドさせ, C6横突起より尾側約1cmの部位から穿刺し, C7横突起と考えられる骨に当てる. シリンジはディスポーザブルの5ml, 穿刺針はテルモ社の25ゲージ25mmのものを使用しているが, 針は骨に当たるとかなり先折れするため, 骨に接触した後は穿刺~抜針の繰り返しは数回にとどめる. 薬液はメピバカイン5mlを注入するが, 1ml注入毎に血液や脳脊髄液が吸引されないことを確認する. 短頸や猪首の患者で横突起が触れにくい患者では, その患者のC6(C7)横突起の位置を透視下で確認しながら数回行い, ある程度解剖学的位置関係を把握した上で, 通常の外来でのSGBを行うことが望ましい. 施行後の圧迫については, 患者本人により反対側の示指と中指の2本で5分間強く圧迫させているが, 血液が少量でも吸引された場合には, 7分間の圧迫を行っている. 時間経過とともに圧追圧が減少する例が多く, 観察時に圧迫を促すよう指示することが有用である. 適当な圧迫方法については今後検討の余地がある. SGB後は初回で40分, 2回目以降で30分の安静を指示する. 安静解除の観察は, 繁忙な外来では怠りがちであるが, 必ず担当医がホルネル徴候と施行後の合併症の有無について評価している.
ISSN:1340-4903