ニューロパシックペインとケタミン 難治性疼痛に対するケタミン投与の問題点および血中濃度

難治性疼痛, 特に神経因性疼痛に対してNMDA受容体拮抗薬であるケタミンの少量投与が有効であることが報告されている. 当施設においても以前よりモルヒネ抵抗性の癌性疼痛に対してケタミン投与が効果的であることを確認してきた. さらに数年前よりはケタミンテスト陽性の非癌性難治性疼痛症例に対してケタミンの点滴静注あるいは内服を実施してきた. しかしその中にはケタミン投与で問題を生じる症例も経験するようになった. 問題となった3症例を呈示するとともに, 一般的なケタミン投与の問題点, 注意点につき述べる. また, ケタミンおよびその代謝物の血中濃度を測定した結果を合わせて紹介し, ケタミン少量投与の除痛...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 9; no. 3; p. 157
Main Authors 横山正尚, 梶原秀年, 大江克憲, 板野義太郎, 佐藤哲文, 溝渕知司, 中塚秀輝, 松三昌樹, 片山 浩, 森田 潔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 2002
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ISSN1340-4903

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Summary:難治性疼痛, 特に神経因性疼痛に対してNMDA受容体拮抗薬であるケタミンの少量投与が有効であることが報告されている. 当施設においても以前よりモルヒネ抵抗性の癌性疼痛に対してケタミン投与が効果的であることを確認してきた. さらに数年前よりはケタミンテスト陽性の非癌性難治性疼痛症例に対してケタミンの点滴静注あるいは内服を実施してきた. しかしその中にはケタミン投与で問題を生じる症例も経験するようになった. 問題となった3症例を呈示するとともに, 一般的なケタミン投与の問題点, 注意点につき述べる. また, ケタミンおよびその代謝物の血中濃度を測定した結果を合わせて紹介し, ケタミン少量投与の除痛効果が代謝物のノルケタミンに関係する可能性を示すとともに, 問題点との関係を考察する. 【症例呈示】3症例ともCRPSと診断された非癌性難治性疼痛患者であり, 過去に各種神経ブロックを受け, 抗うつ薬, 抗痙攣薬などが処方されていた. 症例1(30才, 女性)は自殺企図の既往があり, 他院でペンタゾシンの注射を頻回に受けていた. 入院後, 精神科的アプローチ, リハビリ, 神経ブロックなどの療法とともにドラッグチャレンジテストでケタミン陽性の結果を得た. 病状が落ち着き退院後は1~2週に一度の外来通院でケタミン点滴を実施していたが次第に薬物依存を思わせる頻回のケタミン治療を要求するようになり減量に苦慮した. 症例2(47才, 男性)はアルコール多飲歴があった. 入院後実施したドラッグチャレンジテストでケタミン陽性の結果を得, 当院で作成したケタミンシロップの定期内服を指導したが一回服用量が守れず酩酊状態を来たし, 中止した. 症例3(40才, 女性)は他施設で実施されたドラッグチャレンジテストのケタミン陽性の結果に基づき, 当施設からケタミンシロップ内服の処方を開始した. しかし指導にも関わらず内服回数が増加し, 中止せざる得なかった. 【呈示症例の問題点】これらの症例では, 慢性疼痛特有の精神的要因の関与がかなり認められ, 薬物やアルコールの多量使用の既往が2症例にあった. また徐々に疼痛緩和としてより向精神薬的効果を患者が期待している感が強く表れだした. 医療サイドに劇薬としての指導, 認識の甘さもあったと考えられる. 【ケタミン投与の問題点】一般的副作用として呼吸, 循環, 消化器, 中枢神経への影響, 肝機能障害などが挙げられるが, その他大量持続療法中に尿崩症をきたしたとの報告もみられる. 呈示症例からは習慣性, 依存性の危険があると考えられる. また, ケタミンシロップなど内服薬として用いる場合, そのコストの面でも問題が残る. 【ケタミン投与の注意点】以下に非癌性難治性疼痛に対するケタミン投与の注意点を列挙する. 麻薬と同様の管理で投与すべきである. 薬物あるいはアルコール依存経験者に対しては極めて慎重に投与開始を考える. ケタミンテストで強陽性者に限る. 綿密な投与計画と疼痛の評価を頻回に行い, 劇薬であることの認識を常に持つ. 慢性的な長期経口投与は原則として行わない.
ISSN:1340-4903