神経ブロックの限界と今後 神経ブロックで何ができるか

教科書的には神経ブロックは疼痛性疾患, 交感神経機能亢進疾患と末梢血行障害, 運動機能亢進疾患の治療と診断ができると答えるべきであろう. 癌性疼痛や三叉神経痛の治療で代表される慢性疼痛の治療には知覚神経ブロックを, 手掌多汗症や, 末梢血行障害には交感神経ブロックを, 顔面痙攣や眼瞼痙攣にたいしては運動神経のブロックを行う. それぞれの疾患の治療法には薬物療法や手術療法があるが, それらの疾患に対する神経ブロックの位置づけはわれわれがペインクリニックを始めた, 約30年前と多少の変化がみられる. まず癌性疼痛治療には破壊薬神経ブロックの頻度が減少しモルヒネの使用頻度が増加した. しかし, 交感...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 9; no. 3; p. 155
Main Author 塩谷正弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 2002
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Summary:教科書的には神経ブロックは疼痛性疾患, 交感神経機能亢進疾患と末梢血行障害, 運動機能亢進疾患の治療と診断ができると答えるべきであろう. 癌性疼痛や三叉神経痛の治療で代表される慢性疼痛の治療には知覚神経ブロックを, 手掌多汗症や, 末梢血行障害には交感神経ブロックを, 顔面痙攣や眼瞼痙攣にたいしては運動神経のブロックを行う. それぞれの疾患の治療法には薬物療法や手術療法があるが, それらの疾患に対する神経ブロックの位置づけはわれわれがペインクリニックを始めた, 約30年前と多少の変化がみられる. まず癌性疼痛治療には破壊薬神経ブロックの頻度が減少しモルヒネの使用頻度が増加した. しかし, 交感神経ブロックはアルコールブロックからより安全確実な, 高周波熱凝固法や胸腔鏡下交感神経切除術に変化してさらに神経ブロックの重要性がました. 三叉神経痛の治療法に神経血管減圧術が導入されたときは神経ブロックの必要が少なくなるのではないかと思われたが, 手術成績は神経ブロックほど高くなく再発も多いことがわかった. 近年は神経血管減圧術後の神経ブロック対象患者が増加している. これもレントゲン透視と高周波熱凝固法の導入で患者の苦痛が少なく安全に行えるようになった. レントゲン透視によるリアルタイムモニターにより高度の熟練が必要とされなくなり数年の経験で行えるようになった. Interventional nerve block(レントゲン透視下での定位的針の誘導を行う, 高周波熱凝固法またはアルコールで神経部分除去術)の普及により神経ブロックでできることは変質しつつある. すなわち対症療法としての神経ブロックから治癒治療法としての神経ブロックへと移行してきた.
ISSN:1340-4903