胸髄軟膜下水腫の1症例

胸髄軟膜下水腫による不全麻痺症状を呈した症例を経験したので報告する. 症例は54歳, 男性で, 主訴は両膝~足趾のしびれ, 腰背部痛, 下肢脱力感. 平成12年2月20日, 仕事中のくしゃみ後, 腰背部痛出現し近医受診. その後症状強くなり下肢脱力感も認められるため, 3月16日精査目的に当院を紹介された. 入院時所見で腰背部痛に加え, Th_3 以下の知覚鈍麻, 下肢筋力の低下, 膀胱直腸障害が認められたため入院となった. 入院後MRI検査にてTh_4 からTh_8 に及ぶ脊髄前縁硬膜下, 髄外に細長い紡錘形を示す腫瘍が描出された. 腫瘍はTh_4/5 レベルで腫瘤状に突出し脊髄を著明に圧排...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 7; no. 4; p. 47
Main Authors 池田知史, 斎藤有樹, 岡野隆利, 小林俊哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 2000
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Summary:胸髄軟膜下水腫による不全麻痺症状を呈した症例を経験したので報告する. 症例は54歳, 男性で, 主訴は両膝~足趾のしびれ, 腰背部痛, 下肢脱力感. 平成12年2月20日, 仕事中のくしゃみ後, 腰背部痛出現し近医受診. その後症状強くなり下肢脱力感も認められるため, 3月16日精査目的に当院を紹介された. 入院時所見で腰背部痛に加え, Th_3 以下の知覚鈍麻, 下肢筋力の低下, 膀胱直腸障害が認められたため入院となった. 入院後MRI検査にてTh_4 からTh_8 に及ぶ脊髄前縁硬膜下, 髄外に細長い紡錘形を示す腫瘍が描出された. 腫瘍はTh_4/5 レベルで腫瘤状に突出し脊髄を著明に圧排し脊髄の変性が認められた. 髄液検査ではキサントクロミーが確認されたため胸髄部のくも膜下出血と診断し後方除圧術, 血腫除去術, 椎体固定術が予定された. 手術は3月30日に施行された. 手術所見で腫瘍は脊髄前縁に張り付くようにTh_4 からTh_7 に及ぶ半透明な膜に覆われた帯状水様のcystとしてみられた. 穿刺すると透明水様の液が流出し急速に消失した. 胸髄軟膜下水腫による不全麻痺の報告はまれである. 原因を考察し併せて報告する.
ISSN:1340-4903