多汗症症例でのETS前後のカテコラミンの変動

われわれは現在までに353例の胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)を経験した. ETS前後の循環系への影響を検索する一環の研究として術前後の動脈血中カテコラミン濃度を測定したので報告する. 対象:ETS(両側T2-4レベル)が予定された多汗症症例25例〔男9, 女16, 年齢15~43(25.3±6.4)歳〕. 方法:術前は入院翌日の早朝, EDTA採血管に5mlの静脈採血を行ない, 術後は術後痛が消失した3日目の早朝に同様に採血した. その後4℃で血漿を分離後, -80℃で保冷し, 1週間以内にカテコラミンの測定を行なった. 測定は酸性アルミナ抽出法にて前処理を行ない, 逆相イオン対液体クロ...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 7; no. 1; p. 85
Main Authors 佐藤愛枝, 川崎誠司, 平田道彦, 原野 清, 十時忠秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 2000
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Summary:われわれは現在までに353例の胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(ETS)を経験した. ETS前後の循環系への影響を検索する一環の研究として術前後の動脈血中カテコラミン濃度を測定したので報告する. 対象:ETS(両側T2-4レベル)が予定された多汗症症例25例〔男9, 女16, 年齢15~43(25.3±6.4)歳〕. 方法:術前は入院翌日の早朝, EDTA採血管に5mlの静脈採血を行ない, 術後は術後痛が消失した3日目の早朝に同様に採血した. その後4℃で血漿を分離後, -80℃で保冷し, 1週間以内にカテコラミンの測定を行なった. 測定は酸性アルミナ抽出法にて前処理を行ない, 逆相イオン対液体クロマトグラフィーにかけて電気化学検出器(ECD)にて行なった. 結果と考察:ノルエピネフリン(NE, 正常値:100~450pg/ml)は術前262±131pg/mlが, 術後167±74pg/mlへと有意に減少した(t-test, P<0.01). 一方エピネフリン(E, 正常値:100pg以下)は, 術前50±49pg/mlが術後49±32pg/mlと変化を認めなかった. 以上の結果より, 両側の第2~第4胸椎レベルでの交感神経遮断は血中NE濃度を著明に減少させるが, 正常範囲内であり, Eについては術前後の変動は認めないことがわかった.
ISSN:1340-4903