ホルマリンテストの信頼性について

ラットのホルマリンテストにより誘発されるラットの特異行動(flinch, lick, lift)は, ラットが疼痛を表現する行動(疼痛関連行動)とされ, 疼痛研究の動物モデルとして広く用いられている. これらの疼痛関連行動は経時的に2相性(第1相, 第2相)を示すこと, 特異行動の終局が一定していること, なども含めて臨床の場で遭遇する痛みの推移とは異なる. そこで, ラット脳内に慢性電極を植え込み疼痛関連行動と同時に脳波を連続記録し, 周波数分析及びPower Spectrumにより疼痛関連行動との関係を検討した. 結果:1. ホルマリンテストによる脳波の推移は疼痛関連行動と異なり2相性を示...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 5; no. 3; p. 260
Main Authors 宮崎美由紀, 市瀬 史, 高橋秀則, 柳田 尚, 森田茂穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 1998
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ISSN1340-4903

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Summary:ラットのホルマリンテストにより誘発されるラットの特異行動(flinch, lick, lift)は, ラットが疼痛を表現する行動(疼痛関連行動)とされ, 疼痛研究の動物モデルとして広く用いられている. これらの疼痛関連行動は経時的に2相性(第1相, 第2相)を示すこと, 特異行動の終局が一定していること, なども含めて臨床の場で遭遇する痛みの推移とは異なる. そこで, ラット脳内に慢性電極を植え込み疼痛関連行動と同時に脳波を連続記録し, 周波数分析及びPower Spectrumにより疼痛関連行動との関係を検討した. 結果:1. ホルマリンテストによる脳波の推移は疼痛関連行動と異なり2相性を示さなかった. 2. 疼痛関連行動の一時的消失(移行期)は覚醒脳波を示した. 3. 疼痛関連行動の出現期(第2相の後半)は睡眠脳波を示した. すなわち, 疼痛関連行動と脳波の間には乖離が認められた. 考察と結語:侵外刺激は自然睡眠を妨げるという前提に立つならば, ホルマリン投与後の特異行動の有無を疼痛の有無として単純に解釈するのは問題があろう.
ISSN:1340-4903