慢性難治性疼痛に対する髄腔内バクロフェン投与の効果
GABA_B 受容体のアゴニストであるバクロフェンは, 脊髄レベルで作用して痙縮緩和作用を示す. 最近, 脊髄くも膜下腔持続注入も試みられその有用性が報告されている. 今回, 我々は慢性難治性疼痛の患者2名において髄腔内バクロフェン投与の効果を検討したので報告する. 症例1:67歳女性. 両変形性股関節症(術後), 強度脊柱側弯症, 股関節痛, 歩行障害, 特発性振戦の精査目的にて当院整形外科に入院した. 入院時, 両股関節可動域制限を伴う左股関節痛, 両下肢の軽度筋力低下・軽度腱反射亢進・軽度痙縮および四肢の振戦を認めた. 脳CTは加齢的変化のみで, 頸髄MRIで頸椎の軽度変形が認められた....
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Published in | 日本ペインクリニック学会誌 Vol. 4; no. 3; p. 211 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本ペインクリニック学会
1997
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1340-4903 |
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Summary: | GABA_B 受容体のアゴニストであるバクロフェンは, 脊髄レベルで作用して痙縮緩和作用を示す. 最近, 脊髄くも膜下腔持続注入も試みられその有用性が報告されている. 今回, 我々は慢性難治性疼痛の患者2名において髄腔内バクロフェン投与の効果を検討したので報告する. 症例1:67歳女性. 両変形性股関節症(術後), 強度脊柱側弯症, 股関節痛, 歩行障害, 特発性振戦の精査目的にて当院整形外科に入院した. 入院時, 両股関節可動域制限を伴う左股関節痛, 両下肢の軽度筋力低下・軽度腱反射亢進・軽度痙縮および四肢の振戦を認めた. 脳CTは加齢的変化のみで, 頸髄MRIで頸椎の軽度変形が認められた. 画像所見, 神経学的所見ともに著明な異常所見に乏しく, 手術の適応はないとされ, 除痛目的にて当ペイン外来に依頼された. 他院にてすでに硬膜外ブロック, 傍脊椎体神経ブロック等施行されているが明らかな効果は認めなかった. 当科でも数回の硬膜外ブロックを施行したが鎮痛効果少なく, 患者の承諾を得てバクロフェン50μg(0.5cc)の腰部髄腔内投与を隔日に4回施行した. 髄腔内投与後に著明な脱力感を訴えたが, 振戦は消失し, 各回投与後20時間は疼痛消失した. その後リハビリも進み, 疼痛半減の状態で退院となった. 症例2:61歳女性. 2年前, 左乳癌にて乳房切断術・化学療法・放射線療法後より前胸部痛を訴え徐々に増強した. 3ヵ月前, 転移巣に対し胸壁・肋軟骨部分切除・植皮術を施行, 薬物療法による除痛効果は少なく当ペイン外来受診となった. 頸部持続硬膜外ブロック1週間後自然抜去となり, 再挿入を試みたが偶発的くも膜下挿入となった. 患者と家族の承諾を得て, 0.6%リドカイン(0.5cc/hr)とバクロフェン(50μg/day)を髄腔内持続注入した. MSコンチン(190mg/day)併用中であるが, 現在良好な除痛効果を得ている. 考察:慢性難治性疼痛に対する髄腔内バクロフェン投与は今後期待できる治療法である. |
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ISSN: | 1340-4903 |