腰部交感神経節ブロックと運動療法を主たる治療とした閉塞性動脈硬化症の1症例

壊死を伴う閉塞性動脈硬化症(以下ASO)の1症例に対し, 薬物療法に加え腰部交感神経節ブロックと歩行練習を併用し良好な経過を得たので報告する. 【症例】61歳男性, 左第II趾の壊死と持続痛にて近医受診, ASOによる左第II趾壊死と診断され, 内服薬と持続硬膜外ブロックを併用したが潰瘍の改善がみられず, 当科紹介となった. 初診時左第II趾に潰瘍と壊死を認め, Ankle Pressure Index(以下API)は右0.55, 左0.38であった. 【治療経過】治療として, PGE_1 静注と抗血小板剤等の内服投与を行った. さらに左L2・3腰部交感神経節ブロック施行した結果, 皮膚温が上...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 4; no. 3; p. 172
Main Authors 浅野直子, 岡田 弘, 中山裕人, 秋山潤根, 川村隆枝, 涌澤玲児
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 1997
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Summary:壊死を伴う閉塞性動脈硬化症(以下ASO)の1症例に対し, 薬物療法に加え腰部交感神経節ブロックと歩行練習を併用し良好な経過を得たので報告する. 【症例】61歳男性, 左第II趾の壊死と持続痛にて近医受診, ASOによる左第II趾壊死と診断され, 内服薬と持続硬膜外ブロックを併用したが潰瘍の改善がみられず, 当科紹介となった. 初診時左第II趾に潰瘍と壊死を認め, Ankle Pressure Index(以下API)は右0.55, 左0.38であった. 【治療経過】治療として, PGE_1 静注と抗血小板剤等の内服投与を行った. さらに左L2・3腰部交感神経節ブロック施行した結果, 皮膚温が上昇し色調が改善, 潰瘍部は乾燥し治癒傾向を示した. 完全な除痛と潰瘍の改善を得た後歩行練習を加え, 初診時より約2ヵ月後の退院時APIは左側0.60右側0.66と両側改善, 退院後も効果は維持された. しかしその3ヵ月後, 舌腫瘍の手術のため, 術後安静を保ったところ患部は悪化した. PGE_1 の静注と週3回の硬膜外ブロックを併用し血行改善と除痛を得, さらに再度歩行練習を行った. 術後3ヵ月の退院時APIは左側0.79右側0.74と改善した. 以後内服薬と歩行練習で経過観察し, APIは両側0.6~0.7を維持, 疼痛や感染もなく, 当科初診より1年2ヵ月で壊死部は自然脱落した. 【考察】本症例はASOに対する従来の薬物療法に加え, 交感神経節ブロックと歩行練習を行った. 交感神経節ブロックは側副血行路形成, 潰瘍の治癒促進の他, 発汗を停止し壊死部の乾燥が維持できる. 本症例では二次感染の予防とともに分界線が明瞭となり自然脱落となり得た. さらに歩行練習の併用により筋血流も増加したものと思われた. 本症例のようにDSA上外科的療法の適応と診断された症例であっても, 交換神経節ブロックに歩行練習を加えた積極的な保存療法を試みることで手術せずに済むこともあり, 患者のQOLの向上に寄与すると考えられた. また外科的療法の前に施行することにより, 術後の成績向上にも有利と考えられた.
ISSN:1340-4903