広島大学脳神経外科における中枢性疼痛に対する大脳皮質電気刺激療法の経験

【序論】従来, 視床痛を代表とする中枢性疼痛は薬物などに抵抗性で治療に苦慮することが多かったが, 近年, 脊髄や視床や大脳皮質などを電気的に刺激する方法が施行され始め, その効果が注目されている. 今回我々は大脳皮質運動領域電気刺激療法の有効性を検討する目的で, 当科における運動領域電気刺激療法8施行例の治療成績を検討したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 【対象と方法】1992年9月から1996年1月の間に, 広島大学脳神経外科にて運動領域硬膜外電気刺激療法が施行された8例を対象とした. 対象8例の内訳は, 男性6例, 女性2例, 平均年齢53.8(24~80)歳, 基底核梗塞2例,...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 3; no. 3; p. 194
Main Authors 竹下真一郎, 栗栖 薫, 有田和徳, 川本仁志, 富永 篤, 飯田幸治, 花谷亮典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 1996
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Summary:【序論】従来, 視床痛を代表とする中枢性疼痛は薬物などに抵抗性で治療に苦慮することが多かったが, 近年, 脊髄や視床や大脳皮質などを電気的に刺激する方法が施行され始め, その効果が注目されている. 今回我々は大脳皮質運動領域電気刺激療法の有効性を検討する目的で, 当科における運動領域電気刺激療法8施行例の治療成績を検討したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 【対象と方法】1992年9月から1996年1月の間に, 広島大学脳神経外科にて運動領域硬膜外電気刺激療法が施行された8例を対象とした. 対象8例の内訳は, 男性6例, 女性2例, 平均年齢53.8(24~80)歳, 基底核梗塞2例, 高血圧による基底核出血3例, AVMによる基底核出血2例, アテトーゼに対するThalamotomy後1例であった. 治療適応を明確にする目的で, 術前にモルヒネ投与, イソゾール投与, 頭皮上からの大脳皮質運動領域磁気刺激を施行し, 痛みの改善度を検討し, 局所麻酔下で行う大脳皮質運動領域の硬膜外電気刺激装置設置術と, 全身麻酔下で行う前胸部へのレシーバー設置術の2段階に分けて手術を施行した. 電気刺激開始後, 患者の自覚的な改善度を指標として治療効果を検討した. 【結果】術前のモルヒネ投与では8例中3例で痛みが消失, 1例で改善, 4例で無効であり, イソゾール投与では8例中3例で痛みが改善, 5例で無効, また頭皮上からの磁気刺激では1例のみ痛みが改善し, 7例で無効であった. 運動領域の硬膜外電気刺激では8例中6例で, 70%以上の痛みの改善を認めた. 【結語】1:大脳皮質電気刺激療法は中枢性疼痛に対して有用であった. 2:モルヒネ投与, イソゾール投与, 運動領域磁気刺激による痛みの改善と, 運動領域電気刺激による治療成績に相関傾向は認めなかった. 3:大脳皮質電気刺激の治療効果を予測する術前検査の確立が必要であった.
ISSN:1340-4903