訪問看護の開始により可能となった一般総合病院での在宅医療
当院ペインクリニックでの癌性疼痛治療についての現状は, 各科から紹介を受け主治医と併診の形で対応している. また, 院内の多職種の参加によるパリアティブケア勉強会を重ね, ケアの質的向上も目指してきた. 疼痛がコントロールされ, 在宅で療養可能な患者が外来通院を続け, 最期の1~2週間のみ入院した例はいくつか経験してきた. 今回, 看護相談室が開設され, 1名の専属看護婦の熱意で訪問看護にも精力的に取り組むという協力態勢ができることにより, 種々の医療処置が必要であるが, できる限り自宅で頑張りたいという膀胱癌終末期患者の在宅医療が可能となったので報告する. 患者は72歳男性, 税理士として自...
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Published in | 日本ペインクリニック学会誌 Vol. 3; no. 3; p. 163 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本ペインクリニック学会
1996
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Summary: | 当院ペインクリニックでの癌性疼痛治療についての現状は, 各科から紹介を受け主治医と併診の形で対応している. また, 院内の多職種の参加によるパリアティブケア勉強会を重ね, ケアの質的向上も目指してきた. 疼痛がコントロールされ, 在宅で療養可能な患者が外来通院を続け, 最期の1~2週間のみ入院した例はいくつか経験してきた. 今回, 看護相談室が開設され, 1名の専属看護婦の熱意で訪問看護にも精力的に取り組むという協力態勢ができることにより, 種々の医療処置が必要であるが, できる限り自宅で頑張りたいという膀胱癌終末期患者の在宅医療が可能となったので報告する. 患者は72歳男性, 税理士として自宅で開業. 平成6年6月, 膀胱癌に対して膀胱全摘術及び小腸による代用膀胱造設術を受けた. 術後, 自然排尿は難しく, セルフカテーテルにより腸粘膜分泌物の洗浄や排尿を行ってきた. 平成7年6月, 左仙腸関節部位に広範囲な転移巣が認められたので泌尿器科に再入院し, 左下肢の疼痛のため麻酔科に紹介された. 硫酸モルヒネ徐放錠90mg/日より開始し, 150mg/日まで漸増したが, 転移巣に対する放射線照射40Gおよび動脈塞栓術後は, 120mg/日でコントロールでき, 8月31日に退院した. 以後は2週間に1度の通院にて在宅療養していたが, 平成8年1月にはいり疼痛の増強, 不眠, 下肢の浮腫, 全身の衰弱などで車椅子での通院も困難となった. しかし本人は自宅で仕事を続けることを強く希望したので, 看護相談室に依頼したところ, 直ちに訪問の計画を作成し, 近所のホームドクター, 訪問看護ステーションとの連絡も取り, 泌尿器科主治医, 麻酔科医とが連携する在宅ターミナルケアのチームができあがった. これまでのセルフカテーテルが, 衰弱により自力では不可能となり, 導尿カテーテルを留置し, 1日2回の膀胱洗浄を訪問看護婦と妻とが交代で施行している. 疼痛には硫酸モルヒネ徐放錠240mg/日およびジクロフェナク坐薬50~100mg/日を投与し, 嘔気, 便秘, 不眠, 浮腫や脱水の有無などについてきめ細かい観察と医師への報告がなされ, 医師の往診も随時行っている. かかる在宅ターミナルケアは, 当院看護相談室看護婦が扇の要となって初めて実現でき, この方向を病院全体としての理解と体制的保証へと発展させていきたい. |
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ISSN: | 1340-4903 |