小児開胸手術におけるInterpleural Blockによる鎮痛法

(はじめに) Interpleural Block(以下IPB)とは, 胸腔内に局麻薬を注入し複数本の肋間神経及び交感神経を同時にブロックする方法である. 開胸術後の小児の術後鎮痛にIPBを用い, その鎮痛効果を評価した. (対象及び方法) 神戸大学医学部附属病院及び兵庫県立こども病院で開胸手術を施行された症例で, 疼痛を言葉にできる4才以上の小児11症例を対象とした. 原疾患はPDA5例, 肺分画症2例, 転移性肺腫瘍2例, 肺嚢胞症1例, 縦隔腫瘍1例で, いずれも肋間開胸にて手術を施行された. 胸腔内カテーテル挿入は閉胸前に術者により施行された. その方法は胸腔ドレーン挿入部付近にTop...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 2; no. 2; p. 267
Main Authors 上川恵子, 白川淳二, 尾原秀史, 鈴木玄一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 1995
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Summary:(はじめに) Interpleural Block(以下IPB)とは, 胸腔内に局麻薬を注入し複数本の肋間神経及び交感神経を同時にブロックする方法である. 開胸術後の小児の術後鎮痛にIPBを用い, その鎮痛効果を評価した. (対象及び方法) 神戸大学医学部附属病院及び兵庫県立こども病院で開胸手術を施行された症例で, 疼痛を言葉にできる4才以上の小児11症例を対象とした. 原疾患はPDA5例, 肺分画症2例, 転移性肺腫瘍2例, 肺嚢胞症1例, 縦隔腫瘍1例で, いずれも肋間開胸にて手術を施行された. 胸腔内カテーテル挿入は閉胸前に術者により施行された. その方法は胸腔ドレーン挿入部付近にTophy針を穿刺し20Gの硬膜外カテーテルを挿入, 背側を沿わせ先端がドレーンの先端より2-3cm頭側にくるように固定した. 11例をA, Bの2群にわけ, 疼痛出現時にA群(5例)には0.25%ブピバカイン1ml/kgを, B群(6例)には同量の局麻薬に0.125%エピネフリンを付加して仰臥位でカテーテルより注入した. 疼痛の評価としては啼泣, 活動, 興奮, 血圧をスコア化したHannallahらのペインスコア(0-10点)を用いた. また血圧, 脈拍, 呼吸状態, 合併症の有無も観察し, 血中ブピバカイン濃度も測定した. (結果) ペインスコアは局麻薬注入15分後には全例で0となった. 鎮痛剤の追加投与を必要とするまでの時間はA群:6.17±1.21, B群:7.76±3.44時間であった. 局麻薬注入後の呼吸, 循環状態は安定しており, 1例にHorner症候群が認められたが局麻中毒等の重篤な合併症はなかった. 投与5分後の血中ブピバカイン濃度はA群:3.96±2.52, B群:1.81±0.82μg/mlと有意差が認められた. (結論) 1.小児肋間開胸手術症例8例にIPBを施行した. 2.IPBは硬膜外ブロックと異なり血行動態の変化が少なく, 手技が簡便で小児開胸術後の鎮痛に安全で有用であると思われる. 3.エピネフリンを付加すると血中ブピバカイン濃度を抑えることができる.
ISSN:1340-4903