非癌性疼痛に対するモルヒネ長期投与の2症例-その有用性と限界

最近, モルヒネの末梢作用, 抗炎症作用, 更に抗ストレス作用に関する報告も多く, NSAIDSでコントロール不十分な慢性疼痛に対するモルヒネの有用性を示唆するものである. 今回, 慢性関節リウマチ(RA)と壊疽性膿皮症の2症例の難治性疼痛にモルヒネを長期間使用した経験より, その有用性と限界について報告する. 症例) 1 71歳, 女性. 昭和43年発症のRA. この間, 骨接合術, 左膝関節, 両股関節の全置換術を受け, この過程で腹部大動脈閉塞となった. 両下肢阻血性疼痛のため平成6年5月より麻酔科にて疼痛治療開始. その後, 右大腿切断, 左下肢動脈バイパス術を受けた. 下肢阻血性疼痛...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 2; no. 2; p. 258
Main Authors 合田由紀子, 伊東義忠, 河東 寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 1995
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Summary:最近, モルヒネの末梢作用, 抗炎症作用, 更に抗ストレス作用に関する報告も多く, NSAIDSでコントロール不十分な慢性疼痛に対するモルヒネの有用性を示唆するものである. 今回, 慢性関節リウマチ(RA)と壊疽性膿皮症の2症例の難治性疼痛にモルヒネを長期間使用した経験より, その有用性と限界について報告する. 症例) 1 71歳, 女性. 昭和43年発症のRA. この間, 骨接合術, 左膝関節, 両股関節の全置換術を受け, この過程で腹部大動脈閉塞となった. 両下肢阻血性疼痛のため平成6年5月より麻酔科にて疼痛治療開始. その後, 右大腿切断, 左下肢動脈バイパス術を受けた. 下肢阻血性疼痛, 幻肢痛, 仙骨褥瘡部痛に対して, 局麻薬のみでは鎮痛不十分で, 硬膜外モルヒネ10mg/dayの併用を必要とした. カテーテル留置が長期となったため, モルヒネ水の経口とし, 30mg/day分6で約3か月間, 現在ではMSコンチン20mg/day分2で鎮痛良好に経過している. モルヒネ使用8ヶ月を経過. 症例) 2 67歳, 男性. 平成1年より下腿潰瘍多発し, 壊疽性膿皮症, ASOの合併で, 左下腿切断術後も断端部潰瘍形成し, 平成6年5月より疼痛治療開始. 局麻薬とブプレノルフィン0.05mg/dayの持続硬膜外ブロックでコントロールされていた. 11月疼痛再燃し, 左下肢を大腿部で再切断術後も幻肢痛が持続し, 硬膜外モルヒネ12mg/dayを要した. その後モルヒネ水内服を経てMSコンチン40~60mg/day分2で鎮痛良好であったが, 他の薬剤の併用によると思われる血中アンモニアの急激な上昇と意識障害が出現し, モルヒネを中止した. アミノレバン輸液により翌日には意識状態は改善した. 以後はブプレノルフィン坐薬を主として鎮痛を得ている. モルヒネ使用は約3ヶ月間. まとめと結語) 両症例とも出血性胃潰瘍の既往があり, NSAIDSを十分には使用できない状態で, 下肢の阻血性の痛みや幻肢痛にモルヒネを併用して鎮痛効果を高めることができた. しかし癌性疼痛とは異なり, 適量の安全限界が狭いという印象を受けた. 従って注意深い経過観察による投与量の微調整が必要で, 外来処方による疼痛管理に応用するには限界があると思われる.
ISSN:1340-4903