O1-3. 当院における無症候性がん関連VTEの治療状況

「●目的」当院における無症候性がん関連VTEの治療状況につき検証すること. 「●方法」対象は, 当院で2015年1月1日~2016年12月31日にかけて, 治療が行われた無症候性がん関連VTE連続294例(平均年齢69.4±11.4歳, 男性113例, 女性181例). 出血はISTH基準に準じた. 「●結果」症例は肺血栓塞栓症(PTE)の合併が36例, 深部静脈血栓症(DVT)が288例(近位型52例, 遠位型236例), PTE + DVT症例が30例, PTE単独症例が6例であった. 悪性腫瘍の内訳では肺がんが13.3%, 大腸がんが12.2%, 膵がんが7.5%の順で多かった. ワルフ...

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Published in心臓 Vol. 52; no. 7; p. 779
Main Authors 中谷仁, 荻原義人, 佐藤徹, 山田典一, 土肥薫, 伊藤正明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.07.2020
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Summary:「●目的」当院における無症候性がん関連VTEの治療状況につき検証すること. 「●方法」対象は, 当院で2015年1月1日~2016年12月31日にかけて, 治療が行われた無症候性がん関連VTE連続294例(平均年齢69.4±11.4歳, 男性113例, 女性181例). 出血はISTH基準に準じた. 「●結果」症例は肺血栓塞栓症(PTE)の合併が36例, 深部静脈血栓症(DVT)が288例(近位型52例, 遠位型236例), PTE + DVT症例が30例, PTE単独症例が6例であった. 悪性腫瘍の内訳では肺がんが13.3%, 大腸がんが12.2%, 膵がんが7.5%の順で多かった. ワルファリンが16%の症例で使用され, DOACは40.1%, 理学療法等で経過観察となった症例が42.9%であった. また循環器内科へコンサルトされていた症例は51.7%で, このような症例では, 抗凝固療法の施行率が75.7%と高い傾向を認めた. フォローアップ期間中に症候性VTEの再発や抗凝固療法下でのVTE増悪(血栓伸展)はなかったが, 抗凝固療法非施行下や術後, 抗凝固療法中止後の再発・血栓伸展を全体の5.4%に認めた. 観察期間内の出血については, 抗凝固療法非施行下での出血を全体の1%に認めた. また抗凝固療法中の出血は, ISTH基準の大出血が1.2%, 非大出血で臨床的に問題となる出血も含めると6.5%であった. 「●考察」VTEの再発・伸展例は少なく, 出血例も少なかった. 少数例の検討で影響因子の同定はできていないが, 下腿限局型DVTや肺動脈遠位側でのPTE例といった軽症例が大多数であったことが, 再発・出血例が少なかったことの要因として考えられた. 抗凝固療法非施行下例でも症候性VTEへの悪化例はなく, よりVTE再発高リスク群を同定するリスク層別化法の開発が望まれる.
ISSN:0586-4488