1 病態の解明, 疾患概念の変遷

「はじめに」 筆者が卒業したのは1970年で, 本特集の50年を振り返るスタート地点と言えるが, 当時のわが国の実臨床は, 不整脈毎に抗不整脈薬を使い分けるようなレベルではなかった. 不整脈を診断した時点で, 医師の経験に基づいて薬剤が選択され, 何故その薬剤を選んだかを質問しても, 答えられる医師は居なかった. 使用できる薬剤もジギタリス, キニジン, プロカインアミドのみの時代で, 例えば, 発作性上室頻拍症ではジギタリスが定番であった. 即効性のジゴキシンやセジラニドが臨床応用される前で, 当時使用できた遅効性内服薬のジギトキシンの効果が出るまでの2時間程度をベッドサイドで待機させられ,...

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Published in心臓 Vol. 50; no. 2; pp. 112 - 118
Main Author 小川聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.02.2018
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ISSN0586-4488

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Summary:「はじめに」 筆者が卒業したのは1970年で, 本特集の50年を振り返るスタート地点と言えるが, 当時のわが国の実臨床は, 不整脈毎に抗不整脈薬を使い分けるようなレベルではなかった. 不整脈を診断した時点で, 医師の経験に基づいて薬剤が選択され, 何故その薬剤を選んだかを質問しても, 答えられる医師は居なかった. 使用できる薬剤もジギタリス, キニジン, プロカインアミドのみの時代で, 例えば, 発作性上室頻拍症ではジギタリスが定番であった. 即効性のジゴキシンやセジラニドが臨床応用される前で, 当時使用できた遅効性内服薬のジギトキシンの効果が出るまでの2時間程度をベッドサイドで待機させられ, 効果がなければ追加投与を指示された. それでも不思議なもので, 何時間か経つと頻拍が停止し, 「治せた」という自己満足で一人感激していた記憶がある. このような状況であった不整脈診療が, この50年間における病態生理の解明, 相次ぐ抗不整脈薬の開発, さらにはわが国独自の診療ガイドラインの提唱など, によって大きく転換してきた.
ISSN:0586-4488