P-12 奇異性塞栓を併発した肺血栓塞栓症の2例

「症例1」44歳女性. 両足首を捻挫し両下肢ギブス固定で医療を受けた. 6日後に突然右腰部痛を認め他院に受診. 腎盂腎炎疑いで抗菌薬投与を受けるも改善なく, その後の心エコーで右心負荷を認め当科に紹介となった. 胸部症状は認めなかったが, 造影CT検査で両肺動脈, また腹腔動脈, 上腸間膜動脈, 右腎動脈, 腹部大動脈, 左右総腸骨動脈に, また静脈相で左総腸骨静脈から外腸骨静脈, 膝窩静脈に造影欠損を認めた. 頭部MRI検査では左中大脳動脈領域に小梗塞を認めた. 経食道心エコーでは右心系の拡張と心房中隔に右→左シャントを認めた. 亜広範型肺血栓塞栓症および多発奇異性塞栓の診断で抗凝固療法を開...

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Published in心臓 Vol. 49; no. 7; p. 773
Main Authors 中谷仁, 松田明正, 荻原義人, 山田典一, 伊藤正明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.07.2017
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Summary:「症例1」44歳女性. 両足首を捻挫し両下肢ギブス固定で医療を受けた. 6日後に突然右腰部痛を認め他院に受診. 腎盂腎炎疑いで抗菌薬投与を受けるも改善なく, その後の心エコーで右心負荷を認め当科に紹介となった. 胸部症状は認めなかったが, 造影CT検査で両肺動脈, また腹腔動脈, 上腸間膜動脈, 右腎動脈, 腹部大動脈, 左右総腸骨動脈に, また静脈相で左総腸骨静脈から外腸骨静脈, 膝窩静脈に造影欠損を認めた. 頭部MRI検査では左中大脳動脈領域に小梗塞を認めた. 経食道心エコーでは右心系の拡張と心房中隔に右→左シャントを認めた. 亜広範型肺血栓塞栓症および多発奇異性塞栓の診断で抗凝固療法を開始, 2週間後の経食道心エコーでは右心負荷は消失し直径6mmの心房中隔欠損(左→右シャント)を認めた. 3週間後のCTでは肺塞栓はほぼ消失し, 奇異性塞栓も消失した. その後の右心カテーテル検査で平均肺動脈圧8mmHg, Qp/Qs 0.92でO2 stepupは認めなかった. 閉鎖術も考慮したが, 患者から希望がなく, 抗凝固療法継続でフォローアップの方針となった, 以後8年再発なく経過している. 「症例2」78歳男性. 小児期に心房中隔欠損症と診断, 52歳時に開胸閉鎖術の既往あり. 他院で膀胱腫瘍に対し経尿道的切除術を受け退院となったが, 膀胱タンポナーデをきたし再入院となった. 入院中に突然右上肢の痺れ, 脱力感を認め, CT検査で急性動脈閉塞が疑われ当院に搬送となった. 緊急カテーテル検査で右上腕動脈に血栓閉塞を認め, 血栓吸引およびバルーン拡張術を施行した, その後, 前医CTを確認したところ, 両肺動脈にも造影欠損を認めており, 抗凝固療法を開始した. 下肢静脈エコーでは左膝窩および両下腿に深部静脈血栓を認めた. 経食道心エコーでは術後のパッチ部分の一部に右→左シャントを認めた. 膀胱腫瘍に対する追加治療が必要な状況であり, 相談の上, 抗凝固療法継続でフォローアップしているが再発なく経過している. 奇異性塞栓を併発した肺血栓塞栓症の2例を経験したので文献的考察を加え報告する.
ISSN:0586-4488