3 心筋病理

「はじめに」たこつぼ心筋症(症候群)は一過性の心尖部バルーン状の収縮不全(拡張)を呈する病態を指す. 本病態は急性期左心室造影検査が一般化される以前から存在し, それぞれの時代の診断モダリティを用いて, 「急性可逆性心筋梗塞」, 「一過性心筋梗塞様心電図」, 「心尖部一過性バルーン状拡張」, 「一過性巨大陰性T波症候群」などと報告されていた. この現象が広島市民病院の佐藤光先生らにより「たこつぼ」と命名された1990年代以降, たこつぼ心筋症(症候群)はわが国の心臓専門医には日常診療で遭遇するレベルの疾患となった. しかし, 欧米では2001年までまとまった報告がなく, 彼らは, 本病態を前壁...

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Published in心臓 Vol. 48; no. 10; pp. 1133 - 1137
Main Author 河合祥雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.10.2016
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Summary:「はじめに」たこつぼ心筋症(症候群)は一過性の心尖部バルーン状の収縮不全(拡張)を呈する病態を指す. 本病態は急性期左心室造影検査が一般化される以前から存在し, それぞれの時代の診断モダリティを用いて, 「急性可逆性心筋梗塞」, 「一過性心筋梗塞様心電図」, 「心尖部一過性バルーン状拡張」, 「一過性巨大陰性T波症候群」などと報告されていた. この現象が広島市民病院の佐藤光先生らにより「たこつぼ」と命名された1990年代以降, たこつぼ心筋症(症候群)はわが国の心臓専門医には日常診療で遭遇するレベルの疾患となった. しかし, 欧米では2001年までまとまった報告がなく, 彼らは, 本病態を前壁梗塞が中絶(aborted)した稀な症例の日本人臨床家の誤認, もしくは日本の地方病と考えていたようである. この病態が日本人以外の白人にもあると欧米で理解されたのは2003年のDesmetらの報告以降である. 本稿では, たこつぼ症候群の心筋病理について解説し, Human Stress Cardiomyopathy病変との異同, Capture myopathy病変との関連について触れる.
ISSN:0586-4488