慢性心筋炎と急性炎症心筋症に対する免疫グロブリン療法(supertherapy)

原因不明の自己免疫疾患での免疫グロブリン療法が注目されている. 病原体に対する中和抗体としての作用や, Fcレセプターのブロック作用, 炎症性サイトカインに対する抑制作用などが考えられている. 臨床的には, ITP(idiopathic thrombocytopenic purpura), 多発性筋炎, 川崎病などで著効を示す. 筆者の検討では, 実験的ウイルス性心筋炎および巨細胞型心筋炎で著効を示した. 海外では, 急性炎症性心筋症や周産期性心筋症で臨床トライアルが報告された. 疾患のetiologyに志向した新しい治療法として, 心筋疾患での免疫グロブリン療法は, 今後益々脚光を浴びるもの...

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Published in心臓 Vol. 33; no. 6; pp. 511 - 517
Main Author 岸本千晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 2001
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Summary:原因不明の自己免疫疾患での免疫グロブリン療法が注目されている. 病原体に対する中和抗体としての作用や, Fcレセプターのブロック作用, 炎症性サイトカインに対する抑制作用などが考えられている. 臨床的には, ITP(idiopathic thrombocytopenic purpura), 多発性筋炎, 川崎病などで著効を示す. 筆者の検討では, 実験的ウイルス性心筋炎および巨細胞型心筋炎で著効を示した. 海外では, 急性炎症性心筋症や周産期性心筋症で臨床トライアルが報告された. 疾患のetiologyに志向した新しい治療法として, 心筋疾患での免疫グロブリン療法は, 今後益々脚光を浴びるものと思われる. 心筋炎(myocarditis)とは, 壊死を伴った心筋の炎症性疾患のことで1), ウイルス, 細菌など種々の原因で生じる. 原因不明(idiopathic)のこともあり, また全身性疾患の部分症状として起こる(secondary)こともある. 心筋炎に対する治療のうち, ステロイド剤および免疫抑制剤による免疫抑制療法に関しては, 以前より賛否両論があり, 臨床的あるいは実験的にも解決をみていなかった. そこで, アメリカで100例以上の確定診断された心筋炎症例を, プレドニン, サイクロスポリン, アザチオプリンを含む治療群と対照群に分け, 約6ヵ月間治療し, その後5年間にわたって観察した多施設共同研究が1995年に発表された2). その結果, 進行性心筋炎および慢性心筋炎に対しての免疫抑制療法の有効性はなかった.
ISSN:0586-4488