ニホンジ力によるミヤコザサの採食とオサムシ科甲虫の群集構造との関係

ニホンジカによる森林衰退が進む奈良県大台ヶ原では、防鹿柵によるシカの排除が行われているが、これが節足動物の多様性に与える影響は不明である。本研究では、ニホンジカによるミヤコザサの採食とオサムシ科甲虫の群集構造との関係を調べるため、シカの主要食物であるミヤコザサの現存量を防鹿柵や刈り取りにより操作した実験区を設け、ピットフォールトラップによる捕獲調査を行った。また、オサムシ科甲虫の食物となる地表性小動物を捕獲するため、粘着トラップを各実験区に設置した。オサムシ科甲虫の総捕獲数、種数と多様度指数はササ現存量と明確な関係がなかった。最優占種オオクロナガオサムシ捕獲数はササ現存量とバッタ目捕獲数に対し...

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Published inNihon Shinrin Gakkaishi Vol. 91; no. 2; pp. 111 - 119
Main Authors 上田, 明良, 日野, 輝明, 伊東, 宏樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.04.2009
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Summary:ニホンジカによる森林衰退が進む奈良県大台ヶ原では、防鹿柵によるシカの排除が行われているが、これが節足動物の多様性に与える影響は不明である。本研究では、ニホンジカによるミヤコザサの採食とオサムシ科甲虫の群集構造との関係を調べるため、シカの主要食物であるミヤコザサの現存量を防鹿柵や刈り取りにより操作した実験区を設け、ピットフォールトラップによる捕獲調査を行った。また、オサムシ科甲虫の食物となる地表性小動物を捕獲するため、粘着トラップを各実験区に設置した。オサムシ科甲虫の総捕獲数、種数と多様度指数はササ現存量と明確な関係がなかった。最優占種オオクロナガオサムシ捕獲数はササ現存量とバッタ目捕獲数に対して正の関係があった。2番目に多いフジタナガゴミムシは、ササ現存量との関係はなく、開空度と負の関係があった。3番目に多いコガシラナガゴミムシ捕獲数はササ現存量と負の関係があり、トビムシ目、ハエ目、ハチ目と正の関係があった。これらの結果から、ニホンジカの採食によるミヤコザサの減少は、オサムシ科甲虫の多様度には大きな影響を与えないが、群集構造には影響すると考えられた。
Bibliography:ZZ20018854
773286
ISSN:1349-8509