リンゴの同一樹上における切り返しせん定の有無が頂端新梢生長に及ぼす影響,特に品種の分枝特性との関係

リンゴの同一樹上における一部の1年生枝(前年の新梢)の切り返しせん定が、頂端新梢長に及ぼす影響を明らかにするため、主として‘ふじ’と‘紅玉’、一部‘北斗’のさまざまな樹齢の樹のさまざまな状態の1年生枝を用いて、1年単位の一連の実験を5年間にわたって行った。‘ふじ’と‘北斗’においては頂端新梢長は、せん定区と無せん定区の間で差が見られなかった。一方、‘紅玉’においては頂端新梢はせん定によって長くなった。‘ふじ’では無せん定1年生母枝上の新梢数は少なく、せん定によって新梢数と総新梢長は減少しなかった。‘紅玉’の無せん定枝は比較的多くの新梢を発生し、せん定は新梢数と総新梢長の減少をもたらした。‘ふじ...

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Published inEngei Gakkai zasshi Vol. 72; no. 6; pp. 473 - 481
Main Authors 菊池, 卓郎, 塩崎, 雄之輔, 安達, 敏幸, Yassunaka, F.S, 大竹, 康友, 西出, 勉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.11.2003
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ISSN0013-7626

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Summary:リンゴの同一樹上における一部の1年生枝(前年の新梢)の切り返しせん定が、頂端新梢長に及ぼす影響を明らかにするため、主として‘ふじ’と‘紅玉’、一部‘北斗’のさまざまな樹齢の樹のさまざまな状態の1年生枝を用いて、1年単位の一連の実験を5年間にわたって行った。‘ふじ’と‘北斗’においては頂端新梢長は、せん定区と無せん定区の間で差が見られなかった。一方、‘紅玉’においては頂端新梢はせん定によって長くなった。‘ふじ’では無せん定1年生母枝上の新梢数は少なく、せん定によって新梢数と総新梢長は減少しなかった。‘紅玉’の無せん定枝は比較的多くの新梢を発生し、せん定は新梢数と総新梢長の減少をもたらした。‘ふじ’と‘紅玉’の間に見られた上記の違いは、徒長枝を用いた実験でも同様に認められた。一連の実験の結果を総合して下記の推論に達した。1.1年生母枝からの新梢の生長の強さは、かなりの程度まで母枝の長さと太さ、樹上における位置、樹の基部からの距離等、母枝自体の状態と樹上において母枝のおかれた条件によって決定される。2.頂端新梢の生長は、このような母枝に固有の生長の可能性と、母枝上の芽の間の相互の影響の結果としてもたらされる。3.‘ふじ’のような側生新梢を発生しにくい品種では、頂端新梢の側生新梢に対する優位性が確立される傾向が強い。このような品種ではせん定は頂端新梢長にほとんど影響しない。それは頂端新梢の優位性に加え、せん定によって母枝上の新梢数の変化が少なく、頂端新梢と側生新梢の相互間の関係に変化がないためである。4.‘紅玉’のような側生新梢を発生しやすい品種では、頂端新梢の側生新梢に対する優位性は強くない。このような品種ではせん定は頂端新梢の長さを増大させる。それはせん定によって側芽の数を減少させることにより、生長初期の段階において頂端新梢の生長に有利な状態をもたらすとともに、その後の側生新梢の頂端新梢に対する抑制を減少させるためである。
Bibliography:ZZ00015006
682141
ISSN:0013-7626