重度身体障害者更生援護施設における頸髄損傷者の日常生活活動の調査

【はじめに】頸髄損傷者(以下, 頸損者)の多くは, 日常生活活動(以下, ADL)に重篤な支障をきたす. 頸損者のADLの獲得は残存機能レベルにより異なるとの報告が一般に行われている. しかし, 自立したADLの獲得に要する期間に関しての報告は少ない. 今回, 我々は当センター内の重度身体障害者更生援護施設(以下, 当施設)を利用した頸損者を対象に調査を行ったので報告する. 【対象と方法】平成6年4月から平成13年1月までに当施設に入所した外傷性頸髄損傷で, Frankelの分類がAおよびBの運動機能が完全麻痺を呈した49名を対象とした. 各利用者個人の医学的情報, ADL(食事, 更衣, 排...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 221
Main Authors 篠山潤一, 神沢信行, 堀口ゆかり, 町田勝広, 大喜多潤, 大庭潤平, 藤井多紀子, 吉見陽子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】頸髄損傷者(以下, 頸損者)の多くは, 日常生活活動(以下, ADL)に重篤な支障をきたす. 頸損者のADLの獲得は残存機能レベルにより異なるとの報告が一般に行われている. しかし, 自立したADLの獲得に要する期間に関しての報告は少ない. 今回, 我々は当センター内の重度身体障害者更生援護施設(以下, 当施設)を利用した頸損者を対象に調査を行ったので報告する. 【対象と方法】平成6年4月から平成13年1月までに当施設に入所した外傷性頸髄損傷で, Frankelの分類がAおよびBの運動機能が完全麻痺を呈した49名を対象とした. 各利用者個人の医学的情報, ADL(食事, 更衣, 排尿, 排便, 入浴, 移乗)および自動車運転の獲得状況及び自立に要した期間を, 各個人のケース記録より調査した. 【結果】対象者の入所時の平均年齢は26.5±9.3歳, 受傷後経過期間は39.9±44.5ヵ月, 医学的リハビリテーションの期間は22.4±12.6ヵ月であった. 当施設内のADLが自立した者(以下, 自立群)は43名87.8%で平均年齢は24.7±7.3歳であった. 自立に至らなかった者(以下, 非自立群)は6名で平均年齢は39.5±13.0歳であった. 当施設内ADLの自立に要した平均期間は19.4±13.0ヵ月であった. 残存機能レベル別ではZancolliの分類がC5A~C6B1群(20名)で27.9±12.8ヵ月, C6B2群(14名)で10.1±5.0ヵ月, C6B3~C7群(9名)で14.9±11.1ヵ月であった. 自立群のうち医学的リハビリテーションを終了し, 継続して施設入所を行った者(32名)の自立に要した平均期間が17.7±13.3ヵ月であったのに対し, 在宅生活を経過して入所した者(11名)では24.4±11.8ヵ月であった. 非自立群においても在宅生活を行っていたものが50%であった. 移乗動作は47名95.9%が自立していた. 移乗動作の内訳はリフター移乗が47名, 垂直移乗が17名, 側方移乗が23名で自立していた. 自動車運転は34名が自立し, そのうち13名が新規に免許を取得した. 【考察】重度四肢, 体幹機能麻痺を呈する頸損者にとって自立したADLの獲得は非常に困難である. しかし, 自助具や福祉用具などを利用することにより可能となる場合もあり, 今回の調査結果においてもADLが自立したすべての頸損者が自助具や福祉用具を活用していた. 今回の調査結果より平均年齢が自立群に比べ非自立群で高かったことより, 残存機能レベルと併せて年齢も予後予測を行う上での要因であると思われる. 継続したリハビリテーションを行った者がADL自立までの期間が短縮していた結果より, 頸損者に対して, 継続的に専門的なリハビリテーションを行う事の重要性を確認した. 報告ではADLの各動作の獲得状況や自立に要する期間についても詳しく言及したい.
ISSN:0289-3770