日本衛生学会の100年に向けての提言-これからの衛生学会に望むこと
何年前からか衛生学会の学術総会に参加しなくなった. その理由を考えてみると, 学会に「魅力」を感じなくなったということであろう. シンポジウムや教育講演は, 毎回同じようなテーマに同じような研究者が報告する. 最先端の研究をしている最適な演者もいたが, しかしながら, 多くの場合その人選が的外れであったり過去の人であったりする場合が多かった. 学会は, 退官間近の教授が主宰する場合が多い. それまでの研究生活を締めくくる意味もあるだろうし, 名誉的な意味合いもあるだろう. 私は, それはそれで理解できるし容認できる. そうしたことに価値を見出す人が居ても不思議でない. ただ, 学会を「魅力」あ...
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Published in | 日本衛生学雑誌 Vol. 61; no. suppl; pp. 36 - 37 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本衛生学会
15.03.2006
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ISSN | 0021-5082 |
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Summary: | 何年前からか衛生学会の学術総会に参加しなくなった. その理由を考えてみると, 学会に「魅力」を感じなくなったということであろう. シンポジウムや教育講演は, 毎回同じようなテーマに同じような研究者が報告する. 最先端の研究をしている最適な演者もいたが, しかしながら, 多くの場合その人選が的外れであったり過去の人であったりする場合が多かった. 学会は, 退官間近の教授が主宰する場合が多い. それまでの研究生活を締めくくる意味もあるだろうし, 名誉的な意味合いもあるだろう. 私は, それはそれで理解できるし容認できる. そうしたことに価値を見出す人が居ても不思議でない. ただ, 学会を「魅力」あるものにすることだけは妨げないでほしいと思う. 学会長はその多くが60歳前後であろう. 大学の学務やその他の雑務に従事している方々が多い. すでに最先端の研究の現場から離れており学界の最新の知見に疎い場合が少なくない. もちろんご高齢でも最前線で活躍される方々もいる. しかし, 多くの場合が研究以外に忙殺されているので, どうしても研究テーマや内容に関して的外れになってしまう. これまで拝聴してきた経験から述べると学会長講演も必要ないのではないだろうか(そうした枠をむしろ学会長に対する学会功労賞などの表彰の場にした方がより適切と思われる). 基調講演や特別講演, シンポジウムやフォーラムの講演者は, 学会長の長い研究生活から得た人脈に基づいた人選になる. こうしたことは古参の教授には違和感がないかもしれないし, また学会とはそういうものだ, と言う人も居るだろう. しかし, 最前線で研究している人や最新の研究成果を聞きたいと望む人にとっては, こうした学会は, やはり期待するものとは懸け離れたものとなり, 陳腐な内容に感じてしまう. かくして学会長が運営する学術総会は「魅力のない」ものとなってしまう場合が多くなる. 現代における自然科学の進歩は想像以上に早く, また細分化の道を突き進んでいる. 学会長の人脈に頼るよりも, たとえば学会学術運営委員会のような委員会(若手, 中堅研究者のメンバーが望ましい)に委託するなどした方が「魅力的な学会」になるのではないだろうか. あるいは半分以上は公募によるテーマ設定, 人選などを実施してみてはどうだろうか. 学会参加者が増加しない現状, しいては学会員そのものが増加しない現状を真剣に検討する時期に来ているように思う. 学会の発展は, 100周年に向けて残り25年でどのように自己変革して行くかにかかっていよう. |
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ISSN: | 0021-5082 |