訪問リハビリテーションにおけるゴールについて

【はじめに】訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)対象者の多くは, 体力や機能の維持, 生活環境の整備, 社会参加の促進, 介護量の軽減などに努め自立した生活の支援を目的としている. そのため主体となるアプローチが機能障害に対してであったり, 生活障害に対してであったりと多種多用である. しかし, 現実として訪問リハアプローチの実践場面では機能維持のみを目的とした, 訪問リハが多い感を受ける. そのため訪問リハアプローチを展開する上で, 訪問リハにおけるゴールを設定しなければ本質的な問題の可決には至らないと考えられる. そこで今回訪問リハにおけるゴールとは何か, 訪問リハでのゴール設定する上で...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 341
Main Authors 与儀哲弘, 金澤寿久, 仲栄真勝, 仲田千賀子, 貞松徹, 湧川尚子, 玉盛令子, 今村義典, 末永英文, 嶋田智明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
Subjects
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)対象者の多くは, 体力や機能の維持, 生活環境の整備, 社会参加の促進, 介護量の軽減などに努め自立した生活の支援を目的としている. そのため主体となるアプローチが機能障害に対してであったり, 生活障害に対してであったりと多種多用である. しかし, 現実として訪問リハアプローチの実践場面では機能維持のみを目的とした, 訪問リハが多い感を受ける. そのため訪問リハアプローチを展開する上で, 訪問リハにおけるゴールを設定しなければ本質的な問題の可決には至らないと考えられる. そこで今回訪問リハにおけるゴールとは何か, 訪問リハでのゴール設定する上で必要な因子は何かを推察する目的でアンケート調査を行い, 検討したので報告する. 【対象, 方法】1997年4月1日から2002年11月25日の現時点までの期間に, 訪問リハを利用された24名. 内訳は, 1年以内で訪問リハを終了した群(A群)20名(男性7名, 女性13名, 平均年齢74.8±12.4歳)と, 1年以上訪問リハを継続している群(B群)10名(男性8名, 女性2名, 平均年齢63.5±8.7歳)を対象とした. そして, 理学療法士(以下PT)が対象者の自宅を訪問し本人, 家族に対し以下の項目に対してアンケート調査を行い, 2群間の比較検討を行った. 具体的には, 1. 心理面評価:意欲の指標, 実生活に対する不安について, 2. 環境面評価:補装具, 福祉用具, 家屋改造の満足度, 家族介護力度, 3. ADL評価:Barthel index, 4. PT自身の意識調査:ニーズに対する意識, 在宅スタッフ, 事業所との協業, 連携, 訓練プログラム目的に関する説明について調査した. 【結果】1. 心理面評価は意欲面や本人の実生活に対する不安について2群間に有意差がみられた. 2. 環境面評価は家族介護力のみに有意差がみられ, 3. ADL評価結果にも有意差がみられた. 4, PT自身の意識調査においては在宅スタッフ, 事業所との協業, 連携, ニーズに対する意識において有意差がみられた. 以上よりA群の特徴として本人, 家族, 在宅スタッフが描いているニーズに到達されたときに終了となる方が多い. 終了後は一人を除き全員が通所リハにて対応している. 逆にB群の特徴としては, 社会参加を拒否されたり, 経済的問題や障害が重度で外に出ることが難しい方, 他のサービスでは対応が難しい方であった. 【考察】今回の結果より, 訪問リハの役割としてADLの向上, 実生活における不安の軽減, 家族指導, 在宅スタッフとの連携の重要性が再認識された. 訪問リハにおけるゴールとは様々な要因(身体面, 心理面, 環境面, 家族, 社会的背景, PT自身の意識)に対し多面的に存在している事が今回の結果より推察された. 訪問リハのゴールを考える上で, 今回の因子も十分に考慮した上で行う必要性があると思われる.
ISSN:0289-3770