ラット皮膚デコリンの構造変化-拘縮モデルとの関連における一考察
[目的]皮膚組織の硬化が予想される加齢(成長)時に, コラーゲンを修飾するプロテオグリカンであるデコリンの構造変化を解析することで, コラーゲン線維の成熟と関連を明らかにする. また, 拘縮モデルへの応用として考察する. [方法]Wistar系ラットの胎生16.5日から生後90日齢までの背部皮膚組織を用いた. 皮膚組織からデコリンを抽出, 精製し, 抗デコリン抗血清を用いたウエスタンブロッティングを行った. さらにコンドロイチナーゼABCによりGAG(Glycosaminoglycan)鎖を消化し, コアタンパク質を調製後, ウエスタンブロッティングにより確認した. また, 皮膚組織中のコラー...
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Published in | 理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 278 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会 Japanese Physical Therapy Association (JPTA) |
Subjects | |
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | [目的]皮膚組織の硬化が予想される加齢(成長)時に, コラーゲンを修飾するプロテオグリカンであるデコリンの構造変化を解析することで, コラーゲン線維の成熟と関連を明らかにする. また, 拘縮モデルへの応用として考察する. [方法]Wistar系ラットの胎生16.5日から生後90日齢までの背部皮膚組織を用いた. 皮膚組織からデコリンを抽出, 精製し, 抗デコリン抗血清を用いたウエスタンブロッティングを行った. さらにコンドロイチナーゼABCによりGAG(Glycosaminoglycan)鎖を消化し, コアタンパク質を調製後, ウエスタンブロッティングにより確認した. また, 皮膚組織中のコラーゲン線維およびデコリンの形態変化を検討するために, 胎生18.5日及び90日齢のラット背部皮膚組織を摘出し, 電子顕微鏡で観察した. コラーゲンの染色は, オスミウム酸により, デコリンの染色はキュープロメロニックブルーにより行った. [結果]デコリンタンパク質量は, 生後0.5日齢より増加し, 生後90日齢では胎生18.5日齢の約30倍まで増加した. 胎生18.5日齢の平均分子量は約100kDaであるが, 次第に小さくなり, 生後90日齢では70kDaまで減少した. いずれの時期においてもコアタンパク質の分子サイズに変化は認められなかった. 電顕観察より, 胎生18.5日齢デコリンのGAG鎖は, コラーゲン線維に不規則に結合しているのに対し, 生後90日齢ではコラーゲン線維に規則正しく直交していた. 胎生18.5日のGAG鎖長78.58±13.94(nm)が生後90日で54.05±4.79(nm)と短くなった. また, コラーゲン原線維の線維径が成長することで約30nmから約100nmへ増大した. [考察]皮膚が硬化していく状態で, 皮膚デコリンの分子量が低下し, コアタンパク質の分子サイズが変わらないことから, デコリンの主糖鎖であるGAG鎖が短くなったものと考えられた. Scottらのshapeモデルを参考に考えると, GAG鎖が短くなることで, コラーゲン線維密度の増加が起こったものと推察された. 拘縮部位ではコラーゲン線維の間隙が狭くなっているものと考えられており, Akesonらのモデルはコラーゲン以外の分子の関与を考慮していなかった. デコリンという分子を介在することで別のメカニズムの可能性が想定された. 今後, 拘縮部位で同様の変化が起こるのか, そして温熱などの物理的刺激に対してデコリン分子及びコラーゲン線維の構造がどのように変化していくのかを検討する必要がある. 現在, 糖尿病モデルでの同様の検討を予定している. |
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ISSN: | 0289-3770 |