11. 塗装作業者に発生した骨髄異形成症候群の1例

ベンゼンによる再生不良性貧血や白血病はよく知られるが, ベンゼン環に側鎖を持つトルエン, キシレンなどが造血器系障害のリスクとなるかについては議論がある. 症例は56歳の男性塗装工で, 40歳から14年余にわたり焼却炉のスプレー塗装に従事し, 52歳頃の定期健康診断から白血球数の減少が進行した. 骨髄異形成症候群と診断され, 4年間の経過で急性骨髄性白血病に移行した. 48歳, 51歳時の有機溶剤健診では尿中馬尿酸が分布2相当値で, 52歳時の作業環境測定結果は, トルエンのB測定値が173.8ppmと高濃度であった. 使用溶剤の定性分析ではベンゼンは検出されず, 主要成分はトルエン, エチル...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 48; no. 3; p. 84
Main Authors 上島通浩, 直江知樹, 河合俊夫, 五藤雅博, 那須民江
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 20.05.2006
公益社団法人日本産業衛生学会
Japan Society for Occupational Health
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ISSN1341-0725

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Summary:ベンゼンによる再生不良性貧血や白血病はよく知られるが, ベンゼン環に側鎖を持つトルエン, キシレンなどが造血器系障害のリスクとなるかについては議論がある. 症例は56歳の男性塗装工で, 40歳から14年余にわたり焼却炉のスプレー塗装に従事し, 52歳頃の定期健康診断から白血球数の減少が進行した. 骨髄異形成症候群と診断され, 4年間の経過で急性骨髄性白血病に移行した. 48歳, 51歳時の有機溶剤健診では尿中馬尿酸が分布2相当値で, 52歳時の作業環境測定結果は, トルエンのB測定値が173.8ppmと高濃度であった. 使用溶剤の定性分析ではベンゼンは検出されず, 主要成分はトルエン, エチルベンゼン, キシレンで, 使用頻度の低い一部製品でグリコールエーテル類が検出された. 本症例の骨髄所見の特徴である多系統の造血細胞の異形成, 芽球のCD34陽性, 5番染色体の構造変化は, 環境要因との関連が深い所見とされ, 塗装作業との因果関係が強く疑われた.
ISSN:1341-0725