16. 地方自治体職員を対象とした包括的メンタルヘルス対策の推進に関する研究
「目的」本研究では, 地方自治体における包括的なメンタルヘルス対策を整備するため, 個人と組織の資源といったポジティブな要因から, 職業性ストレスやメンタルヘルス不調といったネガティブな側面まで, 多面的な調査による検討を行った. 特に, 限られた資源を枯渇させないための効率的な仕組みが求められるスクリーニングによる二次予防と職員の主体的な参画を促す仕組みが必要となる一次予防を中心に検討した. 「方法」2010年6月に地方自治体1事業場約600名を対象に調査を実施し, 538名(男性387名, 女性151名)から回答を得た. 調査には, メンタルヘルス風土尺度WIN, JCQ, K6, MBI...
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Published in | JOURNAL OF UOEH Vol. 34; no. 1; p. 124 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
産業医科大学
01.03.2012
産業医科大学学会 The UOEH Association of Health Sciences |
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ISSN | 0387-821X |
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Summary: | 「目的」本研究では, 地方自治体における包括的なメンタルヘルス対策を整備するため, 個人と組織の資源といったポジティブな要因から, 職業性ストレスやメンタルヘルス不調といったネガティブな側面まで, 多面的な調査による検討を行った. 特に, 限られた資源を枯渇させないための効率的な仕組みが求められるスクリーニングによる二次予防と職員の主体的な参画を促す仕組みが必要となる一次予防を中心に検討した. 「方法」2010年6月に地方自治体1事業場約600名を対象に調査を実施し, 538名(男性387名, 女性151名)から回答を得た. 調査には, メンタルヘルス風土尺度WIN, JCQ, K6, MBI-GS, 職務満足感尺度の5尺度合計82項目を使用した. 分析には, まず, 効率的な二次予防の枠組みを検討するため, K6及びMBI-GSの有所見者の人数を算出し, 有所見者に対する対応の優先順位を検討した. 次に, 不安・抑うつ気分と関連する要因を整理するため, WIN, 職業性ストレス, 性別, 年代, 職位, 所属部署を説明変数, K6の所見を基準変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った. 「結果・考察」二次予防において, 単一のツールによる疾病のスクリーニングでは, 有所見者が多数に及び, 対応や支援に困窮する可能性が懸念される. ストレス反応等, 職場での事例性も想定される状態を合わせて評価し, 疾病性が疑われる有所見者への対応の優先順位を整理できる可能性が示唆された. 一方で, 職員による働きやすい職場づくり等の予防活動は, 産業保健活動における資源が確保しにくい事業場では, 特に重要となる. このような組織改善では, 職業性ストレス等, ネガティブな要因の緩和にとどまらず, 満足感や働きやすさ等の個人と組織の資源の充実強化を目的としたポジティブなアプローチを組み合わせた対策が効果的であることが示唆された. 以上の対策には, 調査による効率的な実態把握が起点となっている点で共通している. 本研究では, 多面的な評価にもとづく調査を活用した一定の枠組みを示唆することができた. 今後は, この枠組みを構成する個々の対策の効果を丁寧に検証し, 対策の過不足を整理し, 対策の実効性を洗練させる必要がある. |
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ISSN: | 0387-821X |