介護老人保健施設における転倒と非運動的介入の関連について

【はじめに】近年, 当学術大会においても転倒に関する研究は多く報告されている. その報告内容は, 筋力, 平衡調整機能, 移動能力との関連性, 又運動的介入後の関連性を示したものが多い. しかし, 予防的観点による非運動的介入と転倒の関連を示した報告は少ないのが現状である. 本研究の目的は, 介護老人保健施設(以下, 老健施設)の理学療法士に求められる役割の一つとしての非運動的介入と転倒の関連性を明らかにすることにある. 【対象と方法】対象は平成13年4月から10月までの6ヶ月間において, 熊本県老人保健施設協議会リハビリテーション委員会県南地区ブロック(以下, 当委員会)所属の12施設である...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 357
Main Authors 高野吉朗, 荒木肇, 澤田美智子, 日野邦彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】近年, 当学術大会においても転倒に関する研究は多く報告されている. その報告内容は, 筋力, 平衡調整機能, 移動能力との関連性, 又運動的介入後の関連性を示したものが多い. しかし, 予防的観点による非運動的介入と転倒の関連を示した報告は少ないのが現状である. 本研究の目的は, 介護老人保健施設(以下, 老健施設)の理学療法士に求められる役割の一つとしての非運動的介入と転倒の関連性を明らかにすることにある. 【対象と方法】対象は平成13年4月から10月までの6ヶ月間において, 熊本県老人保健施設協議会リハビリテーション委員会県南地区ブロック(以下, 当委員会)所属の12施設である. 12施設は, 入所定数, 理学療法士数, 平均入所日数の差異が少ない施設を選択した. 又研究の標準化を図る為に, 実施者には当委員会を通じて実施方法を統一した. 転倒は「自分の意志からでなく, 地面またはより低い場所に, 膝や手などが接触すること」とした. 実施方法は, 12施設で実施した転倒に関するアンケート結果から, 非運動的介入項目と設定した(1)理学療法士のケアプランヘの関与有無, (2)転倒後の理学療法士による家族への説明実施有無, (3)理学療法士主導による転倒に関する勉強会の実施有無, (4)理学療法士の転倒予防マニュアル作成への関与有無の4項目と転倒発生率の関連性をMann-Whitneyの検定を用いて統計処理を行った. 【結果】(1)項目有り9施設平均転倒発生率13.54%, 無し3施設平均転倒発生率15.08%, (2)項目有り4施設平均転倒発生率12.1%, 無し8施設平均転倒発生率13.30%, (3)項目有り5施設平均転倒発生率13.20%, 無し7施設平均転倒発生率15.57%(4)項目有り5施設平均転倒発生率11.61%, 無し7施設平均転倒発生率15.57%であった. (4)項目において危険率5%未満で有意差が認められた. 他の項目において有意差は認められなかった. 【考察】12ヶ所の老健施設において, 6ヶ月間に渡り非運動的介入と転倒発生率の実態について明らかにした. 今回, 転倒予防マニュアル作成関与有りと転倒率に有意差が認められ, 転倒の減少につながる介入である事が確認できた. この事は, 近年老健施設におけるリスクマネージメントの導入により, 予防的観点からの包括的なマニュアル作成の取り組みが高まった事が背景にあると考えた. 他の3項目において有意差が認められなかった事は, アンケート結果から判断できない理学療法士の介入量によるものと考えた. 今後は単独介入による効果の判定や環境調整等の幅広い非運動的介入項目との関連, 又運動的介入と非運動的介入の組み合わせ方法や介入数等の多角的介入との関連についての研究を行い, 有効な介入方法を模索していく必要があると考えた.
ISSN:0289-3770