One-stage full-mouth disinfectionにおける炎症性物質および細菌の変動

<目的>歯周病患者は歯周ポケット内でグラム陰性菌やエンドトキシンなどの病原因子に持続的にさらされている. この歯周病変局所の細菌やエンドトキシンは微量であるが慢性的に血流に入り込んで遠隔臓器に移行し, 免疫担当細胞からの炎症性サイトカインや急性期タンパク(C-reactive protein:CRP)などの産生に影響を与える事により, 全身疾患と関連することが示唆されている. 本研究の目的は歯周病患者の血液中の歯周炎局所由来の歯周病原性細菌やエンドトキシンの存在を調べることであった. <材料および方法>全身疾患を有さず, 慢性歯周炎に罹患している非喫煙者のうち過去6ヶ月...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. suppl-1; p. 125
Main Authors 牛田由佳, 中村力, Geena Koshy, 川嶋庸子, 喜地誠, 釜萢いずみ, 矢代麗子, Hormdee. Doosadee, 新田浩, 梅田誠, 石川烈
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯周病学会 25.09.2003
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ISSN0385-0110

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Summary:<目的>歯周病患者は歯周ポケット内でグラム陰性菌やエンドトキシンなどの病原因子に持続的にさらされている. この歯周病変局所の細菌やエンドトキシンは微量であるが慢性的に血流に入り込んで遠隔臓器に移行し, 免疫担当細胞からの炎症性サイトカインや急性期タンパク(C-reactive protein:CRP)などの産生に影響を与える事により, 全身疾患と関連することが示唆されている. 本研究の目的は歯周病患者の血液中の歯周炎局所由来の歯周病原性細菌やエンドトキシンの存在を調べることであった. <材料および方法>全身疾患を有さず, 慢性歯周炎に罹患している非喫煙者のうち過去6ヶ月以内の歯周治療と4ヶ月以内の抗菌薬の投与を受けた者を除き, インフォームド, コンセントを得た17名を被験者とした. 平均年齢49.82±8.16歳, 平均残存歯数26.12±2.99本, 歯周ポケット深さ5mm以上の部位が全顎にしめる割合の平均32.65±12.18%であった. まず口腔清掃指導を行い, プラークコントロールレコードが20%未満になったのちに, One-stage full-mouth disinfection(一診療で超音波スケーラーと手用スケーラーを用い, 全顎のメカニカル, デブライドメントを行う)を行った. 術前, 術直後および術後1ヶ月に採血を行い, 血漿あるいは血清を分離し, 血漿エンドトキシン(Limulus amebocyte Lys-ate:LAL法), 血清IL-6(ELISA法)およびCRP(ラテックスネフェロメトリー法)のレベルをそれぞれ測定した. また全血からDNAを抽出し, A. actinomycetemcomitans, P. gingivalis(Pg), P. intermedia, T. forsythensis(B. forthysus)に特異的なプライマーを用い, 細菌DNAの検出(PCR法)を行った. <結果>1. 血漿中エンドトキシンは術前17名中3名で検出された. 術直後では術前陰性だった2名が陽性となり, 術前陽性の1名が陽性であった. 術後1ヶ月では, 1名が陽性であった. 2. 血清中の1L-6レベルの術前の平均は0.45±0.41pg/ml, 術直後3.77±2.63pg/ml, 術後1ヶ月で0.42±0.38pg/mlであり, 術前と術直後, 術直後と術後1ヶ月との間に有意差があり, 術直後で高かった. 3. 血清中のCRPレベルの平均は術前0.03±0.03mg/dl, 術直後0.03±0.03mg/dl, 術後1ヶ月で0.03±0.03mg/dl, 3者間では有意差は認められなかった. また, 10名中5名の患者で術前に比べ, で値が低かった. 4. PCR法による全血中の歯周病原性細菌の検出にっいては, 術前17名中10名で, 術直後では11名, 術後1ヶ月では6名でPg陽性であった. 術前Pg陰性であった10名中3名が術直後に陽性となった. <考察>歯周病患者の血漿中のエンドトキシン活性は低く, 血流に侵入するエンドトキシンは微量かあるいは侵入しても, すぐに不活性化されてしまうのかもしれない. しかしながら, 血清中のIL-6レベルは, 術直後有意に上昇したことから, 歯周病変部から侵入する, 細菌あるいはエンドトキシンが全身に影響することが示唆された. また, 全血液中から抽出したDNAの中に, 術前においてもPgのDNAが検出されたことから, Pgは血流に慢性的に侵入している可能性が示唆された.
ISSN:0385-0110