14. ESDにて一括切除し得た過形成, 腺腫, 腺癌の混在する巨大早期胃癌の一例

【症例】82歳女性. 体中部大弯に巨大な1sp病変を認め生検結果はadenocarcinoma(pap), non lifting sign(-)を確認しESDによる一括切除を行った. 切除標本の大きさは60×40×38/65×50. 病理はHyperplastic gland, Villous adenoma, Well differentiated adenocarcinoma, m, ly0, voであり, 完全切除し得た. 【背景と検討課題】胃癌治療ガイドラインによる内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)の絶対適応条件は分化型U1(-),...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 55; no. 4; p. 389
Main Authors 佐川俊彦, 小野里康博, 石原弘, 飯塚春尚, 吉成大介, 森一世, 新井弘隆, 高山尚, 阿部毅彦, 茂木陽子, 坂元一郎, 吉村純彦, 田中俊行, 富沢直樹, 安東立正, 小川哲史, 伊藤秀明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 01.11.2005
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Summary:【症例】82歳女性. 体中部大弯に巨大な1sp病変を認め生検結果はadenocarcinoma(pap), non lifting sign(-)を確認しESDによる一括切除を行った. 切除標本の大きさは60×40×38/65×50. 病理はHyperplastic gland, Villous adenoma, Well differentiated adenocarcinoma, m, ly0, voであり, 完全切除し得た. 【背景と検討課題】胃癌治療ガイドラインによる内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)の絶対適応条件は分化型U1(-), 2cm以下のm癌である. EMR後長期経過例が蓄積されるに従い, 分割切除例に遺残・再発例が多いことが分かり, その対策としてより確実な一括切除が求められるようになってきた. このような背景の下に内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)が開発された. 後藤田らは, 10,000例を越す早期胃癌手術例の分析結果を根拠にESDの適応拡大を検討し, 1)粘膜癌(内視鏡的に明らかな粘膜下層浸潤がないもの), 2)内視鏡的にU1(-)の場合は大きさ無制限, U1(+)の場合は3cm以下, 3)生検で分化型腺癌である, を満たす症例とした. 本症例のように胃癌の内視鏡的治療のガイドラインから外れた症例の中に, 病変を正しく選別することで内視鏡的に根治が期待できる症例があると考える. ESDの適応について群馬県内でのコンセンサスを形作りたい. また, 胃癌はde novo発癌が大部分を占めるとされており, 発生機序は不明である. 癌遺伝子・癌抑制遺伝子の変化, DNA修復遺伝子の変化, 間質細胞の機能構築に関与する遺伝子の変化, 環境要因などの関わりが示唆されているが, 大腸癌におけるadenoma-carcinoma sequenceのような整然とした分子生物学的機構の解明には至っていない. 各段階の病変の混在する本症例は多段階的な遺伝子異常の蓄積が関与するHyperplasia-adenoma-carcinoma sequenceのようなde novo以外の胃癌発生機序の存在が示唆された.
ISSN:1343-2826