45. 二酸化チタンナノ粒子の生体影響

「背景および目的」ナノ粒子は機能性が高く, 産業界ではすでに生産がはじまっているが, そのサイズに起因する生体影響については, 未解明の部分が多い. ナノ粒子の有害性評価試験法はまだ確立しておらず, その生体影響は投与量に依存すると考えられる. 本実験では, TiO2のミクロン粒子からナノ粒子を作成し, 気管内注入試験により, 投与量が生体反応に及ぼす影響について検討する. 「実験」試料は市販のTiO2粒子(P90, デグサ製)を用いた. 原粉を滅菌蒸留水中に超音波により分散させ, 遠心分離により上清のナノ粒子懸濁液を得た. 溶液中粒子の中位径は25nmであった. この溶液をWistar系雄性...

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Published inJOURNAL OF UOEH Vol. 34; no. 1; p. 139
Main Authors 大藪貴子, 水口要平, 橋場昌義, 神原辰徳, 李秉雨, 堀江祐範, 大神明, 森本泰夫, 明星敏彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 産業医科大学 01.03.2012
産業医科大学学会
The UOEH Association of Health Sciences
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ISSN0387-821X

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Summary:「背景および目的」ナノ粒子は機能性が高く, 産業界ではすでに生産がはじまっているが, そのサイズに起因する生体影響については, 未解明の部分が多い. ナノ粒子の有害性評価試験法はまだ確立しておらず, その生体影響は投与量に依存すると考えられる. 本実験では, TiO2のミクロン粒子からナノ粒子を作成し, 気管内注入試験により, 投与量が生体反応に及ぼす影響について検討する. 「実験」試料は市販のTiO2粒子(P90, デグサ製)を用いた. 原粉を滅菌蒸留水中に超音波により分散させ, 遠心分離により上清のナノ粒子懸濁液を得た. 溶液中粒子の中位径は25nmであった. この溶液をWistar系雄性ラットの気管内に0.1, 0.2, 1および3mg注入し, 陰性対照群として蒸留水のみを注入した. 注入後3日, 1週, 1, 3, 6, 12ヶ月後に各10匹の解剖を行った. 5匹は右肺よりBALF採取後, 総細胞数, 好中球数計測を行い, 左肺からは病理切片を作製した. また残り5匹は肺重量測定後, 肺内沈着TiO2定量を行った. 肺内沈着量は, 肺を酸分解後, ICP-AESでTiを定量することにより算出した. 「結果と考察」BALF中好中球数は注入3日後に用量依存性に増加し, 1mg注入群では3日後, 6ヶ月後に有意な増加を認め, 3mg注入群では3日後から6ヶ月後まで持続して増加していた. 肺湿重量も同様の傾向であった. TiO2粒子の肺からの排泄速度は生物学的半減期として0.1mg注入群で4.2ヶ月, 0.2mg注入群で4.4ヶ月, 1mg注入群で6.7ヶ月, 3mg注入群で10.8ヶ月と用量依存的に遅延していた. 病理組織像においても用量依存的な反応を示した. これらの結果から, Wistar雄ラットに対して, 1mg程度以上になると, それまで低用量投与では認められなかった反応が認められ, 生体影響の投与量依存性が明らかとなった. 今後有害性評価の際には投与量にも留意する必要があると考えられた.
ISSN:0387-821X