糖尿病性足部潰瘍の危険因子である足底圧異常に対する関節可動域制限の影響
【目的】神経障害, 血管疾患を主要因とする糖尿病性足部潰瘍の危険因子に足底圧異常がある. この足底圧に影響を及ぼす因子として糖尿病患者に固有に発生する関節可動域制限(以下RJM)が報告されている. しかし, どのような影響を及ぼすかについては明確にされていない. そこで, 今回, RJMの足底圧への影響を明確にすることを目的として研究を行なった. 【対象と方法】対象者は健常男性10名, 平均年齢32.9±9歳であった. 方法は足底圧計測装置にて裸足歩行時の足底圧を計測した. 次に, 右足部で足関節背屈を10度, 0度, 第一中足趾節関節(以下FMPjt)伸展を30度, 15度に制限する装具を作...
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Published in | 理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 35 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会 Japanese Physical Therapy Association (JPTA) |
Subjects | |
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | 【目的】神経障害, 血管疾患を主要因とする糖尿病性足部潰瘍の危険因子に足底圧異常がある. この足底圧に影響を及ぼす因子として糖尿病患者に固有に発生する関節可動域制限(以下RJM)が報告されている. しかし, どのような影響を及ぼすかについては明確にされていない. そこで, 今回, RJMの足底圧への影響を明確にすることを目的として研究を行なった. 【対象と方法】対象者は健常男性10名, 平均年齢32.9±9歳であった. 方法は足底圧計測装置にて裸足歩行時の足底圧を計測した. 次に, 右足部で足関節背屈を10度, 0度, 第一中足趾節関節(以下FMPjt)伸展を30度, 15度に制限する装具を作成し足底圧を計測した. 測定値から最大足底圧, 各部位(足趾, 前足部, 中足部, 踵部)ごとの最大足底圧, 最大足底圧部位を抽出した. 【結果】1)足関節制限時の結果. 最大足底圧は, 裸足, 10度, 0度制限時でそれぞれ45.2±16(N/cm2), 43.5±14.9, 42.9±16であり有意差がなかった(P=0.83). しかし, 各部位の最大足底圧は, 足趾において裸足, 10度, 0度制限時でそれぞれ41.9±17.3, 29±13, 23.5±16.3であり有意な減少(P=0.003)と逆相関(相関係数-0.37, P<0.05)が認められた. 前足部ではそれぞれ31.1±17.1, 40.8±16, 42.9±16であり有意に上昇していた(P=0.014). 次に, 最大足底圧部位は裸足時, 足趾8肢, 前足部1肢, 中足部0肢, 踵部1肢であった. 足関節10度, 0度制限時でそれぞれ7肢, 10肢が前足部に存在し有意に増加した(H値16.4, P=0.0003). 2)FMPjt制限時の結果. 最大足底圧は裸足, 30度, 15度制限時でそれぞれ45.2±16, 53.2±14, 57.3±11.8であり有意に圧が上昇していた(P=0.004). また, 各部位の最大足底圧は足趾において裸足, 30度, 15度制限時でそれぞれ41.9±17.3, 51.7±16.5, 57±11.7であり有意な上昇(P=0.004)と相関(相関係数0.39, P<0.05)が認められた. 踵部ではそれぞれ24.3±9.7, 28.4±8.6, 28.3±8.9であり有意な上昇が認められた(P=0.03). しかし, 最大足底圧部位は, 有意な変化が認められなかった. 【まとめ】足関節制限時に糖尿病患者に特徴的な前足部圧の上昇と集中が発生した. また, FMPjt制限により最大足底圧は有意に上昇し, 足趾と踵部の各部位でも圧が上昇した. 以上のようにRJMは足底圧異常へ明確に影響を及ぼす因子であり, 足部潰瘍のハイリスク患者においては足底圧異常改善と足部潰瘍予防のためRJMの評価と関節可動域訓練が必要であると考えられた. |
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ISSN: | 0289-3770 |