2.対麻痺患者に合併した壊死性筋膜炎の1例

対麻痺患者の褥瘡から壊死性筋膜炎を生じた1例を経験した. 症例は70歳, 女性で, 脊髄くも膜のう胞のため不全対麻痺となり車椅子移動が中心であった. 1ヵ月前より発熱があり坐骨部の褥瘡があったが放置, 炎症所見が悪化したため, 入院となった. 抗生剤投与で経過を見ていたが, 入院6日目に下腹部の広範な発赤が出現, 腹部CTでは皮下に褥瘡から会陰を介し下腹部に通じるガス像を伴う炎症所見を認めたため, 壊死性筋膜炎の診断で切開, デブリードマンを施行した. 術後の経過は良好で, 入院78日目に自宅退院となり創は自然閉鎖した. 壊死性筋膜炎は急速に炎症が進行するため, 早期の診断, 治療が有効で,...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 41; no. 2; p. 119
Main Authors 栗林環, 水落和也, 丼畑眞紀, 高倉朋和, 落合藤子, 安藤徳彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.02.2004
社団法人日本リハビリテーション医学会
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
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ISSN0034-351X

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Summary:対麻痺患者の褥瘡から壊死性筋膜炎を生じた1例を経験した. 症例は70歳, 女性で, 脊髄くも膜のう胞のため不全対麻痺となり車椅子移動が中心であった. 1ヵ月前より発熱があり坐骨部の褥瘡があったが放置, 炎症所見が悪化したため, 入院となった. 抗生剤投与で経過を見ていたが, 入院6日目に下腹部の広範な発赤が出現, 腹部CTでは皮下に褥瘡から会陰を介し下腹部に通じるガス像を伴う炎症所見を認めたため, 壊死性筋膜炎の診断で切開, デブリードマンを施行した. 術後の経過は良好で, 入院78日目に自宅退院となり創は自然閉鎖した. 壊死性筋膜炎は急速に炎症が進行するため, 早期の診断, 治療が有効で, その死亡率は35~50%と高値である. 一般に糖尿病のような易感染性疾患を合併していると予後が悪いとされるが, 対麻痺のように感覚障害がある場合でも, 褥瘡や初期の壊死性筋膜炎の症状に気がつきにくく重症化する場合があり, 注意深い観察が必要である.
ISSN:0034-351X