輸血医療と保険診療

輸血は大量出血による貧血や高度の血小板減少による出血症状などに対し, 速効性のある有効な治療法として確立してきた. 全血輸血から始まった輸血療法も現在では赤血球, 血小板, 凍結血漿などの成分輸血が中心であり, さらにはアルブミン, 免疫グロブリン, 血液凝固因子などの血漿分画製剤も精製されており, 各種の疾患や病態に対応しうる成分製剤の使用も可能となっている. 輸血療法は基本的には不足している血液成分を補う補充療法であり, 自己血の場合を除いて同種移植とみなされる. 期待される効果は大きい反面, 予期せぬ副作用も起こり得る. こうした観点からも輸血の適応は慎重かつ適切でなければならず, 実際...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 52; no. 4; p. 472
Main Author 森岡正信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 01.09.2006
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ISSN1881-3011

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Summary:輸血は大量出血による貧血や高度の血小板減少による出血症状などに対し, 速効性のある有効な治療法として確立してきた. 全血輸血から始まった輸血療法も現在では赤血球, 血小板, 凍結血漿などの成分輸血が中心であり, さらにはアルブミン, 免疫グロブリン, 血液凝固因子などの血漿分画製剤も精製されており, 各種の疾患や病態に対応しうる成分製剤の使用も可能となっている. 輸血療法は基本的には不足している血液成分を補う補充療法であり, 自己血の場合を除いて同種移植とみなされる. 期待される効果は大きい反面, 予期せぬ副作用も起こり得る. こうした観点からも輸血の適応は慎重かつ適切でなければならず, 実際の使用に際しては安全であることが求められる. また, 輸血療法は手術や薬物治療と同様に疾患患者を対象とする医療行為のひとつであり, 保険医療に準じた適正な使用が必要である. ここでは, 保険診療と輸血の関わりのなかで, 輸血療法を行う場合の注意すべき点等について述べる. 血液製剤は献血により得られる血液を原料とする貴重な医薬品であり, 国の管理指導のもとに医療機関に供給されてきた. こうした血液の特性に鑑みて, 厚生労働省の通達として「輸血療法の実施に関する指針」および「血液製剤の使用指針」等が呈示されており, 医療関係者はこれを遵守することが求められる. これらの通達は数年毎に見直されており, 平成17年12月に改定版が発表された. こうした指針は輸血療法を施行する医療機関について, 輸血前の検査, 輸血製剤の管理, 輸血実施手順などの輸血医療に関する基本的な規定を示すものであり, 輸血の適応基準とともに輸血効果の評価判定法を示し, 合理的かつ適正な輸血の実施を求めるものである. とくに血液製剤の使用指針改訂版では適正使用の具体的基準のほか, 不適切な使用や使用上の注意も呈示されており, これらは, 保険診療上も遵守すべき指針であると同時に, 問題となりやすい点を指摘していると思われる. 各血液製剤ごとにそのポイントを示す.
ISSN:1881-3011