歯科用レーザーの細胞機能に及ぼす影響について
[目的] Er:YAGレーザーが幅広く臨床応用され, その臨床的価値が認められつつあるが細胞レベルに於けるEr:YAGレーザーの効果に関しては殆ど検討されていない. 今回, 我々は (1)Er:YAGレーザーに対する各種ヒト腫瘍細胞及び正常細胞の感受性 (2)腫瘍細胞に対する直接作用以外に, 免疫系細胞に対して作用するかどうかを調べるためにマウスマクロファージ様細胞Raw264. 7の増殖と(マクロファージの活性化の指標である)NO産生に対する効果 について検討した. 使用したレーザー装置:モリタ製作所製作のEr:YAGレーザー「アーウィン」 使用細胞:ヒト腫瘍細胞HL-60, HSC-2,...
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Published in | 日本レーザー医学会誌 Vol. 24; no. 3; p. 194 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本レーザー医学会
28.09.2003
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ISSN | 0288-6200 |
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Summary: | [目的] Er:YAGレーザーが幅広く臨床応用され, その臨床的価値が認められつつあるが細胞レベルに於けるEr:YAGレーザーの効果に関しては殆ど検討されていない. 今回, 我々は (1)Er:YAGレーザーに対する各種ヒト腫瘍細胞及び正常細胞の感受性 (2)腫瘍細胞に対する直接作用以外に, 免疫系細胞に対して作用するかどうかを調べるためにマウスマクロファージ様細胞Raw264. 7の増殖と(マクロファージの活性化の指標である)NO産生に対する効果 について検討した. 使用したレーザー装置:モリタ製作所製作のEr:YAGレーザー「アーウィン」 使用細胞:ヒト腫瘍細胞HL-60, HSC-2, HSC3, HSG ヒト正常細胞HGF, HPC, HPLF マウスマクロファージ様株化細胞Raw264. 7 [実験方法] (1)ヒト腫瘍細胞及び正常細胞に対する作用 HL-60は10%非働化FBS含有RPMI1640培地中で, それ以外の付着性細胞は, 10%非働化FBS含有DMEM培地中で培養した. 生細胞数は, トリプシンで細胞を剥離後トリパンブルー染色法で測定した. (2)免疫系細胞に対する作用 Raw264. 7細胞を10%非働化DMEM培地中で24時間培養し, レーザー照射後LPS(lOOng/ml)を含む培養液を添加し24時間培養した. また活性化マクロファージに対する効果を調べる為LPS(1OOng/ml)を含む培養液を加えて予めマクロファージを活性化した後に, レーザー照射を行い, LPSを含まない培養液を加えて24時間培養した. 上清中のNO濃度はグリース法, 生細胞数はMTT法により測定した. [結果と考察] (1)レーザー照射の細胞増殖に及ぼす効果は2相性を示した. 高出力レーザー照射は, 温度上昇作用を示し, 腫瘍選択的な細胞障害活性を示した. 低出力レーザー照射は細胞増殖促進効果を示した. また抗酸化剤である, ビタミンC(O. 25mM), N-acetyl-L-cysteine(5mM), カタラーゼ(3000U/mL)では低出力レーザー照射の増殖促進効果は影響を受けなかった. 低出力照射レーザーの効果はマンニトール(ヒドロキシラジカル消去剤)により消去し, 細胞増殖促進効果へのヒドロキシラジカルの関与が示唆された. (2)レーザー照射後にLPSを作用させ細胞を活性化した場合, 低出カレーザー照射はLPSのNO産生の増加を若干増加させたが, 高出力レーザー照射はLPSの効果を減じた. LPSで予め活性化したマクロファージに対してはいずれの照射でもLPSの効果を減弱させた. レーザー照射によりアポトーシス及びネクローシス細胞を誘導している可能性が示唆された. |
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ISSN: | 0288-6200 |